リニア中央新幹線・南アルプストンネル着手のせこすぎる現実 (1/2ページ)

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リニア中央新幹線・南アルプストンネル着手のせこすぎる現実
リニア中央新幹線・南アルプストンネル着手のせこすぎる現実

 4月27日、リニア中央新幹線の南アルプストンネルの長野県側のトンネル掘削が始まった。山梨県側ではすでに2015年に掘削が報じられたものの、長野県側でははじめてで、県内のトンネル掘削も初となる。私は南アルプストンネルの長野県側の出入り口となる大鹿村に住んでいる。ところが、住民である私がトンネル着手を知ったのは、当日の午後新聞社の記者に教えられてからだ。村や地元自治会にも前日に伝えられたという。

 この事業は2014年に国土交通省が着工を認可している。当初JR東海による9兆円の単独事業とされてきたが、すでに不動産取得税の免除などで国費が投じられている上に、昨年、財政投融資を無担保で3兆円投入するという異例の優遇措置を受けている。

 一方、水源が枯れたり、谷が残土置き場にされたり、大量のダンプ通行による騒音や粉じんの影響があることがわかり、沿線の住民は不安を訴えた。しかしJR東海は説明会で「大丈夫」と繰り返すだけなので、昨年には738人の原告が認可取り消しの訴訟まで起こす事態になっている。

 ここ大鹿村でも、工事着工の同意を住民から取り付けるにあたり、JR東海はいくら説明会で不満が出ても「理解が深まった」と繰り返してきた。昨年11月の起工式当日には、説明を求める住民に会場出口が封鎖され、長野県知事と社長が会場に閉じ込められるという醜態を演じている。そのため、いくつもの断層・活断層が横切り、間違いなく「プロジェクトX」並の難工事必死の南アルプストンネル掘削にもかかわらず、JR東海は前宣伝ができなかったのだ。

 記者といっしょに南アルプストンネルの掘削地を見に行った。現場は伊那谷を流れる天竜川から車で30分の大鹿村中心部から、さらに15分。釜沢という集落の、川を挟んで対岸、除山という山の麓である。川沿いのアクセス道はJR東海がゲートを設けて接近できなくしていたため、スーツ姿の記者といっしょに集落の外れの林道から急斜面を下ること10分。川岸に下り立ち対岸を見ると、たしかにトンネルの入り口が見えた。しかし周囲に人影はまばら。フェンスで覆われたトンネルの前には重機が置かれていたものの、掘っている気配はない。周辺では防音壁をのんびり作業員が一枚一枚並べているし、完成した建物はない。

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