S・コネリーの熱演が光る実録犯罪アクション!
アメリカ/1987年
監督/ブライアン・デパルマ
出演/ケビン・コスナーほか
「このハゲ~~!」の怒号で秘書をパワハラし、数年前の“号泣県議”に匹敵する不名誉な“時の人”となった豊田真由子議員。今年の流行語大賞は確実とか。すぐ議員を辞めてSMクラブの女王様に再就職しろとか、ネット雀からも大ブーイングだった。
そもそも“ハゲ”は差別用語であるか否かはともかく、“カッコいいハゲ”の代表格といえば、ショーン・コネリーだろう(まあ、海外では基本的にハゲは揶揄の対照にはならないそうだが)。初代ジェームズ・ボンドとして一世を風靡したが、ボンドのイメージ定着を嫌って、1983年の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を最後に卒業し、薄くなってきた頭部も隠そうとせず、さまざまな役柄に挑み、抜擢されたのが、この実録犯罪アクションの快作だ。
印象的だったコネリーのアカデミー賞受賞コメント
主演はまだ新進スターだったケビン・コスナー。1930年代、ギャング抗争激化に終止符を打つために結成された、決して買収されない(当時は腐敗警官が多く、“アンタッチャブル”とは悪が手出しをできないという意味合い)チームを率いる財務省特別捜査官エリオット・ネス。それを補佐するタフなベテラン警官ジミーをコネリーが演じ、見事アカデミー助演男優賞を獲得。受賞の感想として「役者を長くやってりゃイイこともあるさ」との余裕の発言が印象的だった。
禁酒法時代のネス対ギャング王のバトルをフィクションを交えて描き、ド派手で映像美に凝りまくるデパルマ監督らしい個性がここでも発揮される。過去の名作をしばしば自作に取り込む彼は、今回ユニオン駅での階段の銃撃シーンで、乳母車が階段を転がり落ちるあたりは、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督の伝説的傑作『戦艦ポチョムキン』(1925年)を引用したりして、映画ファンを喜ばせた。
カポネ役のロバート・デ・ニーロは風貌が似ていないにもかかわらず、撮影前に滞在していたローマで、パスタを山ほど食べて十数キロ太り、髪の毛も抜いて禿げ上がりにし、カポネらしく見せてきた。この役作りこそ“デ・ニーロ・アプローチ”と言われるゆえん。あのバットで突然殴り殺すシーンのスゴさもここから生まれたわけだ。
コネリーは2000年にナイトの称号を授与され、熱心なスコットランド独立運動の支持者でもある。21世紀に入ってまもなく引退宣言をし、この夏で87歳となる。好きなゴルフをまだやっている現役なのだろうか。いずれにしても、日本のチンピラ女性議員に「このハゲ~~!」とは言わせない貫禄と矜持の持ち主なのだ。