「米朝」戦争と「奇襲解散」選挙にまつわるエトセトラ|やまもといちろうコラム (1/3ページ)

デイリーニュースオンライン

Photo by schmollmolch(写真はイメージです)
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 山本一郎(やまもといちろう)です。ちょっと気後れしていた晩夏のショートステイの訪欧、訪露出張がぶっ飛んで逆に気楽になりましたとさ。

 直接の関係は無いまでも、日本のメディアではあまり語られないアメリカと北朝鮮の応酬はかなり危機的な状況にも見えますし、この東アジアの緊張を単なる米中対立の文脈で見るだけでは読み違える部分はあるのかもしれません。というのも、北朝鮮もなかなか風変わりな頭領を抱えていますが、アメリカも実にアレな大統領ではないかと見られるわけであります。

 いわゆる挑発ゲームでは終わらないかもしれないという懸念はすでにCNNをはじめとした米欧のメディアだけではなく、北朝鮮問題ではアメリカの先制攻撃も北朝鮮ミサイルのグアム近海への打ち込みもあり得るという前提でチキンレースの態になっているのは、「対話の時期は過ぎた」とするアメリカ外交の中国への失望感がバックボーンにあります。ある意味で、ドナルド・トランプ大統領(71)が北朝鮮攻撃については前のめりで、ホワイトハウスの各要人がむしろ大統領の闘争心を冷まそうとしているとすら見える状況です。

 それでも、アメリカは恐らくは北朝鮮直接攻撃や上陸作戦を前提とした2泊の演習を行う一方、中国もアメリカのこうした姿勢について牽制する発表はしつつ、静観の構えを取っているのは印象的です。水面下では、アメリカ大統領府よりも議会筋が中国の経済活動飲む規則な拡大に懸念を示し、欧州を抱き込んで対中貿易戦争を仕掛けようというようなそぶりも見えます。単純に米朝戦争の前触れというよりは、米中対立の枠組みを超えて拡大する中国に対する牽制を北朝鮮有事の演出を行いながら精いっぱいやっている、という印象です。

 おそらくは、トランプ大統領自身はさしたる戦略も持たず、ものすごい構想を実現しようと執念に燃えているというわけでもなさそうです。むしろ、純粋に力による現状変更は許さない、と力こぶを魅せようと北朝鮮有事を具に内外に示すということぐらいしか考えていないのではないか、と思います。

 これらの東アジアの混乱で一番利得があるのはロシアや一部のASEAN諸国なのでしょうが、このアメリカが繰り広げる恫喝は中国と歩様を揃えるべきか悩むベトナムやインドネシアなどの国々においては悩ましい判断を迫られることになります。同様に、中国との外交や防疫の恩恵に預かるEUも、東アジアの混乱は中長期には景気の低迷を呼び起こす可能性もあり、カナダやオーストラリアのように能天気に「我々はアメリカとともにある」とは言いづらい状況に陥ることも考えられます。

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