世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第239回 失業率と実質賃金 (1/3ページ)

週刊実話

 現在の日本国では、不思議な現象が起きている。失業率が主要国最低水準に低下するほど雇用が改善しているにも関わらず、実質賃金は相変わらず低迷しているのだ。なぜ、雇用環境が改善しているにも関わらず、実質賃金は上昇しないのだろうか。
 2017年7月の完全失業率は2.8%と、3%を切っている。有効求人倍率に至っては1.52(!)。求職者1人に対し、求人が1.5あるわけだ。さらに、正規社員の有効求人倍率も1.01と統計史上初めて1倍を上回った。職種や地域を選ばない限り、現在の日本は求職者の「全員」が正規社員になれるということになる。
 ちなみに、有効求人倍率1.52とは、何とバブル期をも上回る水準だ。日本はバブル期よりも景気がいいのだろうか。そんなはずがない。

 日本の雇用が改善しているのは、二つの要因によるものだ。一つ目は、生産年齢人口(15歳〜64歳)が総人口に占める割合が下がっていること。少子高齢化の進展で日本の生産年齢人口比率は、バブル期の約70%から現在は60.1%にまで下がっている。高齢化し、労働市場から退出する人の数を、労働市場に新規参入する若い世代の数が下回っている以上、生産の拡大がなかったとしても、失業率は下がる。
 二つ目は、企業が退職者の穴埋めとして、短時間労働の雇用を増やしていることである。フルタイムの労働者が労働市場から退出し、短時間労働者を多く雇うことでカバーしようとするため、当たり前だが失業率は下がる。

 左図(※本誌参照)の通り、恐ろしいことに'16年の総実労働時間(月平均)は、何とリーマンショック後の'09年をも下回っているのだ。失業率は、リーマンショック後5%を超えていた。現在は3%を割り込んでいる。明らかに、フルタイム雇用が減り、短時間労働の労働者が増えているわけだ。
 現在の失業率の改善は、安倍政権の経済政策の成果でも何でもない。単に生産年齢人口比率が低下する状況で、企業がフルタイム雇用を短時間労働に切り替えている結果なのである。経済政策の成果で、モノやサービスという付加価値の生産が増え、失業率が下がっているならば、実質賃金は上昇しなければならない。ところが、現実には実質賃金の低迷が続いている。

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