やくみつるの「シネマ小言主義」 米国を裏で動かす「ロビイスト」という存在 『女神の見えざる手』 (1/2ページ)
アメリカって国は、こういうライトに楽しめるサスペンス映画を、いったいいくつ作るんだろうと思ってしまった一作。
「銃規制」という一国を揺るがせるような問題。奇しくも先日、過去最悪の50人以上が死亡した乱射事件がラスベガスで実際に起こってしまいましたが、こういうナーバスな問題すらもハラハラドキドキのエンタテインメントに仕立ててしまい、見る人を飽きさせない劇画のようなテンポのよい展開で乗せられてしまいます。
主人公は、先を読み、相手の裏をかき、根回しをしまくって世論を操作し、クライアントの要望を叶える法案を通していく、辣腕女性ロビイスト「ミス・スローン」。
完璧を求める彼女は、私生活と呼べるものはほぼゼロ。欲望は金で解決し、家族も恋人の気配すらないサイボーグのような美女という設定。これがまた徹底しすぎていてちょっと笑えます。
主人公は緻密な戦略家なんですが、脚本は案外ざっくりしていて、なぜ彼女が銃の所持を支持する会社を辞めてまで銃規制派に加担するのかの理由や、「規制派が勝つにはあと何票足りない」などといった票読みをどのように覆していったのかなど、「活動」の詳細はほとんど語られません。
まあ、そこがちょっと食い足りない部分ではあるのですが、この映画では彼女の言動のどこまでが意図的なのか、見ているこっちが騙されないよう、先を読むのを楽しんでいただきたい。
最後の逆転劇は、スカッとカタルシスを感じるはずですので、それまでは辛抱強く見てほしいですね。
この「ロビー活動」というのは日本では馴染みがないように思いますが、オリンピック招致にあたっては、裏金を渡すなどの「活動」があったと言われています。しかし、マスコミはそれについてまったくといっていいほど追及することなく、あえてなかったことにしてしまっているような気が…。
間もなく総選挙が行われますが、これも緻密な戦略合戦というより、ムードと思いつきで情勢がコロコロ変わっていくので、やはりこの点では日本はアメリカと比べて前近代的なのでしょうか。ま、しかし、様々な戦略を巡らせ、活動をし尽くした結果、トランプのような読めない人物が大統領になってしまうのですから、現実は映画とは違うということかも。