故・勘三郎丈が生涯に一度しか演じなかった伝説のお役。シネマ歌舞伎「め組の喧嘩」公開中 (3/3ページ)
火消し衆はわざわざ火事場装束に着替え、纏や梯子まで持ち出して、準備万端で芝神明に集結します。
「め組の纏(東映太秦映画村で再現されたもの)」
出陣の前に、水盃の儀を本物の水で一人一人次々に行い、最後に勘三郎丈演じる辰五郎の放つ一言、「やっつけろ!」はしびれるほどの格好良さです。鳶頭のその言葉を皮切りに、大人数の火消したちが木遣りの声を上げて花道を駆けてゆく気魄の凄まじさは、まさに圧巻。
また、力士と火消しの大乱闘は普段の歌舞伎では絶対に見られない芝居小屋ならではのアクロバティックな演出ばかり。舞台だけでなく花道や客席まで盛大に使っての大騒ぎで、興奮する事間違いなしです。
スクリーンからあふれる粋でいなせな江戸情緒みどころの3つ目は、なんといっても江戸ッ子たちの気風の良さと江戸情緒。
早口で歯切れのいい江戸弁、いちいち脱いだり捲ったりして見せつける国芳の絵のようなゴテゴテの刺青、力士の些細な一言で堪忍袋がプッツン切れて、すぐに「なんだとォ!」と立ち上がる短気っぷり。め組の火消し衆をはじめ、登場人物は全員まさに江戸ッ子の中の江戸ッ子。どのシーンも「ああ、江戸だなぁ」とため息が漏れるほど、粋でいなせな江戸情緒が映画館全体に流れます。
「め組の喧嘩」が平成中村座で上演された理由この「め組の喧嘩」、歌舞伎の題材にしては低俗という評価もあるようですが、そもそも芝居ははじめから重厚な伝統芸能だったわけではなく、ヒマを持て余したすべて庶民のために存在したものです。ですから、中村勘三郎丈が江戸の芝居小屋を現代に甦らせた「平成中村座」で上演する演目は、まさに庶民を楽しませたこの「め組の喧嘩」でなければならなかった、というべきなのです。
ちなみに、エンドロールでは亡き勘三郎丈のファンなら涙せずにはいられない、素晴らしい演出がなされています。ぜひ映画館に足を運び、その目でお確かめ下さい。
公式ホームページ:シネマ歌舞伎「め組の喧嘩」
め組の喧嘩日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan