玉木正之のスポーツ内憂内患「大坂なおみが伝えるネット・スポーツの醍醐味」 (1/2ページ)
テニスの大坂なおみ選手が、ウィンブルドンなどの4大大会に次ぐプレミア・マンダトリーと称するグループのBNPパリバ・オープンで優勝という大快挙を成し遂げた。
しかも初戦でかつての女王シャラポワ(ロシア)にストレート勝ち。準々決勝で対戦したランキング5位のプリスコバ(チェコ)にも、準決勝で当たったランキング1位のハレプ(ルーマニア)にもストレート勝ち。決勝の相手カサキナ(ロシア・18位)もストレートで圧倒と、まったく見事な完璧な優勝だった。
この調子なら間違いなく4大大会(全豪、全仏、全英、全米)でもいずれ優勝するだろうし、1997年生まれの20歳という若さなら、かつてのナブラチロワ(チェコ)やグラフ(ドイツ)、そして現在のウィリアムズ姉妹(アメリカ)のように、「大坂なおみの時代」を築く選手にもなれるに違いない。彼女のテニスは、そんな輝かしい未来を予感させるほどの圧勝だった。
彼女のプレーはパワフルなサーヴィス、力強いストロークなど、パワー・プレーが賞賛されている。が、それ以上に素晴らしいのは、そのパワフルなショットが、相手の予測不可能な方向に飛ぶことだ。つまり彼女は、まったく同じフォームで、右へ左へ、前へ後ろへ、完全に打ち分けることができるのだ。
だから相手選手は、彼女の放ったスピードのあるボールに、手を伸ばしても追いつけない、というのではなく、まったく手も足も出ない状態で呆然と見送ることになってしまう。ちょうど一流の投手が、速球と変化球をまったく同じフォームで投げ分けることができるように、大坂なおみ選手も、あらゆるコースへ、あらゆる種類の打球を放つことができるのだ。
これはネット・スポーツ(テニス、バドミントン、卓球、バレーボールなどネットを挟んでボールを打ち合う球技)の選手にとっては最大の決め手となる要素で、相手は大坂選手の打球に対して反応する最初の一歩の踏み出しが遅れ、おまけに速く力強いショットを放たれると、もう手も足も出ない状態に陥るのだ。
そんな大坂なおみ選手の将来には大いに期待したい。が、それにしてもテニスのようなネット・スポーツは、考えようによっては残酷きわまりないスポーツとも言える。