二世歌人であることを誂われた和泉式部の娘・小式部内侍が即興で詠み放った、お見事すぎる名歌

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二世歌人であることを誂われた和泉式部の娘・小式部内侍が即興で詠み放った、お見事すぎる名歌

「2世」はいつの時代も大変だった!!

ゴールデンウィーク直前の2018年4月25日、俳優の故・松田優作の次男で人気俳優の松田翔太と、故・横綱千代の富士の次女でモデルの秋元梢の結婚がマスコミ各社より報じられました。大物俳優と昭和の大横綱の2世同士のカップルということも、大きな注目を集めた理由の1つだったようです。

(横綱・千代の富士の手形のレリーフ)

何かと注目を集めることの多い「2世タレント」ですが、彼ら・彼女らには2世であるがゆえの様々な気苦労が絶えないようです。実は平安時代にも、偉大な歌人を母に持ったために苦労した「2世女流歌人」がいました。そんな彼女の歌は、何度か取り上げている「小倉百人一首」にも選ばれています。

華やかな恋愛遍歴で知られる和泉式部の娘・小式部内侍

「小倉百人一首」の60番目の歌の作者・小式部内侍(こしきぶ の ないし)は、56番目に歌を取り上げられた女流歌人・和泉式部と、その最初の夫・橘道貞との間に生まれた娘です。

(画像出典:Wikipedia/小式部内侍)

和泉式部といえば、最初の夫である橘道貞と離婚した後の、冷泉院の皇子である為尊親王やその弟の敦道親王との華やかな恋愛を描いた『和泉式部日記』で知られる、平安朝を代表する女流歌人の1人です。『勅撰和歌集』にはなんと238首もの歌が選ばれています。

紫式部と同じ時期に一条天皇の中宮彰子に仕えていたこともあり、『紫式部日記』の女房批評にも

「男にだらしないところがあるけれど、ちょっとした言葉にセンスがあり、歌にも趣がある。こちらが恥じ入るほどのすごい歌人とまでは思わないけれどね」

という内容で名前が登場しています。

そんな名女流歌人の娘である小式部内侍も、母親に似て幼い頃から歌の才能に恵まれていました。しかし「2世」であるがゆえに、彼女の歌は「母親が代作しているのだろう」と噂が立ち、あまり評価されなかったといいます。

「お母さんからの代作の使者は来たの?」とからかった四条中納言をギャフンと言わせた歌

さて、小式部内侍は母の和泉式部とともに一条天皇の中宮彰子に仕えていましたが、後に母は藤原保昌と再婚し、丹後国(京都府)へ下っていきました。そんな時、都で歌合せが行われることになりました。歌を詠むこととなった小式部に、中納言・藤原定頼がなんとこんな質問をしました。

「丹後にいるお母さんに、代作を頼む使者は出したの?お母さんから代作の文を持った使いはまだ来ないの?それは心配でしょう?」

これを聞いた小式部がその場で即興で答えて詠んだ歌が

大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
(大江山を超え、生野を通っていく道は遠いので、まだあの天の橋立のある丹後の国へは足を踏み入れたこともないし、母からの文も見ていません。)

「行く野/生野」「文/踏み」という掛詞や、「道」の縁語として「ふみ」「橋」が取り入れられた、実に見事な歌です。意地悪を言って2世歌人の小式部をからかった定頼は、彼女の歌才を目の前で見せつけられ、返す言葉もなかったといいます。

こんなやり取りのあった小式部内侍と定頼は、後に交際を噂されるようになりました。もしかしたら定頼は、小式部の機転と教養に惹かれたのかもしれませんね。

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