【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第12話 (3/3ページ)
「そねえな事を言いんしても、一体どこで・・・・・・」
その時、国芳がようやく口を開いた。
「部屋に連子窓のある、京町二丁目裏通りの桐屋。・・・・・・」
みつははっとして国芳の方を向いた。
みつと国芳が逢瀬に使っていた裏茶屋ではないか。
「ああ、京町二丁目の。なかなか風流な裏茶屋じゃねえかい」
佐吉がすかさず口を挟んだ。
さすがの色男、伊達に遊んでいない様子である。
画像 吉原遊廓の裏茶屋 出典元・「郭の花笠」国立国会図書館蔵
「そんなとこオよく知ってたな、芳さん。いつ、そんな所に行ったんでい」
「二度ほど。・・・・・・惚れた女と」
国芳は濁さずに口にした。
みつは国芳がどんな顔をしてその言葉を言ったのか、その表情(かお)を見る事が出来なかった。
はにかんで頬を染めているのか、まっすぐ前を向いて強い目をしているのか。
想像もつかないまま、ひたすらにうつむいている。
ただ国芳が同じ部屋に居るというそれだけで、みつの胸奥の鼓動は擦り半鐘のように激しく鳴り渡っていた。
作中イラスト:筆者
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

