【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第12話 (1/3ページ)
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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第11話 ■文政七年 夏と、秋(4)(国芳はん・・・・・・!)
みつは部屋に入ってきた男の姿を見て身体の力が抜けるほど魂消(たまげ)た。
隣にいる新造の美のるは男の顔を見て自分の背中の刺青(ほりもの)を描いてくれた絵師だと気づいたらしい。礼の一つも言いたそうであったが、姉女郎のただ事ではない様子に気を遣って動かなかった。
何しに来んした、とみつが言うより早く、
「歌川国芳と申しやす」
まるで初対面のように国芳は頬を染め、遠慮がちなにこにこ顔で低頭しながら入ってきた。相も変わらず目が星の海のごとくきらめいている。
佐吉が涼やかな目もとで、微笑しつつ言った。
「花魁、この国芳の兄さんは前に話した俺が飼ってる絵師の兄さんでね。今日は花魁を描いてもらおうと思って呼んだのさ」
みつはあまりの事に二の句が継げない。
佐吉が話すには、こうであった。
今戸の渡しの東岸に位置する近江屋は佐吉が吉原に通う前に必ず立ち寄る茶屋で、幾度も訪れ床几に腰掛け茶を啜るうちに、主人が出てきていつのまにか風流仲間になった。
