長嶋茂雄、野村克也も…プロ野球「感涙秘話」男たちの熱い涙の背景にある“物語”に迫る! (3/5ページ)
移籍を繰り返すも、徐々に成績は下降し、15年に現役引退を表明した。
9月27日の引退試合で、8回表の守備から途中出場。そして8回裏の西武の攻撃は、1番から。5-1で西武がリードしているため、これが最後の攻撃回となる可能性が高かったが、森本の打順は7番。打席に立つには、4人が出塁するしかなかった。ここで、西武ベンチから合言葉が生まれる。
「稀哲さんにつなげ」 勝っているにもかかわらず、各打者が食らいつく。鈍足のエルネスト・メヒアも、サードゴロを打って一塁まで全力疾走。なんとか森本まで、あと1人までこぎつける。
「6番の栗山巧はボールを見極め、ファールで粘りに粘り、最後は四球をもぎ取ります。栗山は“いろいろ稀哲さんにはやってもらった。だから、なんとか稀哲さんが引退する試合で打席に立って終わってもらいたいと、この思いがみんな強かった”と話していました」(スポーツ紙西武担当記者)
この四球を見届けると、ネクストバッターズサークルにいた森本の目からは涙が止まらなくなる。「本当に回してくれる。素晴らしいチームメイト」と、森本は振り返る。
最後の打席はサードゴロに終わったが、温かくチームメイトは出迎える。仲間から愛されていることが、はっきりと伝わる感動の名場面だった。
■「交通事故レベル」大ケガを負った吉村禎章
プロ野球選手にケガはつきもの。長期間のブランクから復活する男たちの姿も感動、感動を呼ぶ。「平成の怪物」といわれた松坂大輔(中日)も、今季4241日ぶりに日本球界での勝利をつかんだ。その松坂と同じように、“天才”と称されるも、故障に苦しんだのが吉村禎章(元巨人、現一軍打撃総合コーチ)。非凡なバッティングセンスで2年目から頭角を現し、3年目からは主力打者にまで成長する。
順風満帆なプロ生活を歩んでいたが、7年目の88年7月6日に悲劇は起こる。3回に通算100号ホームランを放つメモリアルデーになったが、8回の守備で、レフトフライを捕球した際、センターの栄村忠広と激突。左膝の4本の靭帯のうち、3本が完全断裂という「交通事故レベル」の大ケガを負ってしまう。