欧米では地位の低い「翻訳者」 日本でリスペクトされる理由 (2/3ページ)

新刊JP

逆に日本語を英語に訳す時は、「日本文学だけど、英訳するならもうそれは自分達のもの」という感じです。だから、日本語には忠実だけど英語としてはちょっと、という訳文はまず編集者が通しません。欧米では「翻訳のように見えない」というのが翻訳の理想なんです。

――アメリカ文壇については常にチェックされているかと思います。個人的に注目している作家について教えていただきたいです。

柴田:一番はやはり自分が訳しているブライアン・エヴンソンやレアード・ハント、ケリー・リンクの三人です。

自分が訳している作家以外だと、松田青子さんが訳しているカレン・ラッセルかなあ。『紙の民』を書いたサルバドール・プラセンシアなど次の世代も出てきていて、そのあたりは藤井光さんがよく訳しています。

「新しい作家は藤井さん、既存の作家は自分」という棲み分けがあるわけでは全然なくて、もっと大人気なく競い合いたいのですが、今まで訳してきた作家の新作を追っているだけで時間が経ってしまって、なかなか新しい作家を勉強できないのが悔しいところです。

――英訳されたらおもしろいと思う日本の作家はいますか?

柴田:一番は町田康さんですね。文章のトーンがころころ変わるので英訳するのはすごく大変ですが、若手に誰を訳したいか聞くと、まず町田さんの名前が出ます。

普通、文章にはある一貫したトーンがあって、そこがしっかりしているからこそ色々なことが自由にできるわけです。そのトーンを文体とかスタイルと呼ぶわけですが、町田さんは、一貫したスタイルを絶対に持たないことをスタイルにしている。

あとは津村記久子さんや小山田浩子さんもいいですね。小山田さんは昨年イベントで一緒にニューヨークに行ってもらったんですが、エヴンソンと意気投合していました。どちらも夢や妄想を捕まえるのがすごくうまい作家ですから、通じるところがあったんだと思う。

――アメリカ文学のメインストリームを担っているのはどういった作家ですか?

柴田:少し前だとジョン・アップダイクやソール・ベロー、今だとドン・デリーロだとかジョン・アーヴィングですかね。

「欧米では地位の低い「翻訳者」 日本でリスペクトされる理由」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る