文明を知らない民と彼らを待ち続ける男の物語はどう生まれたか 話題のノンフィクション『ノモレ』について聞く(上) (2/4ページ)

新刊JP

――寓話のような印象も受けますし、とてもチャレンジングな文体です。

国分:まあ、読む人によっては先住民の保護政策がどうなっているのかとかそういう事実をちゃんと説明して書いてほしいと思ったりもするでしょう。でも、僕はそこに関心はありません。もし知りたいならば、それはご自身で調べたらどうでしょう、と。

「イゾラド」という、正体不明の先住民が昔からいて、それが突然私たちの前に姿を現した。その翻訳者であるロメウの物語です。その人物を主人公にするのは普通といえば普通かもしれませんが、そこに何が書けるかを考えました。

――主人公であるロメウはどんな人なのですか?

国分:先住民であるイネ族の人で、地味な、真面目な男性でしたね。ペルーの先住民社会は、イゾラド以外は文明化が進んでいるのですが、これはキリスト教の力が強いからなんです。文明と接触して50年くらいしか経っていなくても、まるで500年前から文明化しているかのよう。ロメウはちょっとスペイン語がブロークンだけど、文明化した先住民のひとりです。

――冒頭に登場する伝承。1902年にゴム農園で奴隷にされていた曾祖父たちが生き延びるためにパトロンを殺し、二手に分かれて逃げたという話がこの物語の始まりですが、その伝承は本当なのですか?

国分:実際に記録があるので、そのような事件が起きたというのは本当です。でも、詳細は分からない。ただ、彼らがその伝承を信じている意味では「本当の話」なのだと思います。

実際にロメウの前に姿を現したイゾラドのクッカたちが、生き別れた先住民かどうかも分からないんです。ロメウはその事件が起きてから4代目。イゾラドの場合はもっと早く死んでしまうだろうから5代、6代くらい。同じ子孫にしては、ロメウとクッカの体格が違い過ぎますよね。

でも、それでもなおロメウが「彼らは生き別れの先住民」だと信じることに感動をしました。

――その信じる根拠になるのが「ノモレ」という言葉ですね。

国分:そう、言葉です。「クッカたちは生き別れの先住民の子孫ではないんじゃない?」と言うのは簡単だけど、そういう意見を寄せ付けない信じる力がロメウにはあった。

「ノモレ」は先住民たちが大事にしてきた言葉です。

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