文明を知らない民と彼らを待ち続ける男の物語はどう生まれたか 話題のノンフィクション『ノモレ』について聞く(上) (4/4ページ)
弓矢だけで狩りをするのはすごく大変だけど、鉄砲があれば一発で動物たちを仕留めることができる。そういう便利なものを選ぶのは彼らの選択であって、僕らがそこに対してどうのこうのと言える話ではないのかなと。
――文明側に接触したらもう戻れなくなる。国分:うん。あとは薬ですね。薬はシャーマニズムを壊しますから。特に解熱剤は効力が絶大です。アスピリンをイゾラドの元に持っていけば族長になれるのかもしれない。神様とあがめられるかもしれませんよ。それが決して正しいこととは思えないけど、そのくらい絶大なんですよ。
それをこの100年でやってきたのがキリスト教の伝道者たちです。良いことをしている面もあるけれど、結果として先住民のそれまでの生活を破壊したのは伝道といえるでしょうね。
――アマゾンの奥地の先住民たちへ取材をする中で、国分さんの価値観が揺さぶられたことがありますか?国分:ないです。それぞれがそれぞれの社会で生きていて、僕らの社会から見ると彼らは奇異に映るかもしれないけれど、彼らの中から見てみれば「それって当り前だよな」と思えるんですね。「現代医療よりもシャーマニズムでしょう」と思えてしまう。そういう意味では、僕の価値観は取材を通しても変わらないですね。
(後編に続く)