文明を知らない民と彼らを待ち続ける男の物語はどう生まれたか 話題のノンフィクション『ノモレ』について聞く(上) (3/4ページ)
彼らが森で知らない者に会ったときにその言葉をかけて、弓矢を下ろしたら「ノモレ」、下ろさなかったら敵ということですから、とても大切な言葉ですよね。
――その言葉を通して、ロメウがクッカとの距離を縮めていく様子は微笑ましくもあります。ロメウが「ヨツトレ(カワウソ)」というあだ名をつけられたり。国分:ロメウは泳げるからね。でも、クッカたちは泳げない。もしかしたら、泳がないのかもしれない。川を渡ろうとしないのか、渡って不幸な目に遭った仲間がいるのか、それは分からない。
でも、泳ぐって結構大変なんですよ。僕らは教わるから泳げるけれど、実は難しい。ボールを投げることはできるかもしれないけど、そのボールを木の棒で打つ。これは教わらないとできない。蹲踞もそうですよね。教わらないとできない。泳ぎもそうなのかもしれない。だから、クッカたちはその地域の環境に合わせて生きてきたんでしょうね。おそらく。

国分:とはいえ、それは彼らの立場から考えてみれば分かることですよね。ブラジルのアマゾンの奥地にいるヤノマミ族は100%自給自足だけど、そもそも自給自足のインディオの集落はほとんどない。政府に保護してもらって、お金で物を買ったほうが、もしくは買ってもらったほうが楽なんですよ。
文明側にあるものってとても便利で、ブラジルだとファッコン、スペイン語だとマチェーテという鉄の刀のようなものがあるんですけど、これを持っちゃうとそれ以前の生活には戻れないの。ヤノマミも全員持っていて、おそらく(文明側の)誰かが与えちゃったのだと思います。
火起こしはマッチがあればすぐにできてしまう。狩りについても、鉄砲を一度見たら鉄砲使いますよね。