戦後を代表する人物の一人 ボードビリアンのトニー谷の生涯 (4/5ページ)
行政書士で遺言相続コンサルタントの本田桂子によると、エンディングノートにおいて、自分自身についてのことを記入する意義として、以下のように述べている。
人生にはさまざまな出来事があり、その結果として、今、その人がいる。とはいえ、まわりの人には、その人のほんの一部分しか見えない。それゆえ、その人の「歴史」は、その人の死とともに消滅してしまう。しかし、日常生活の中ではなかなか伝えられないその人の歴史をその人自身が書き残すことによって、死後、周囲の人々がその人を理解する大きな助けになる。また、その人自身も、改めて自分の人生を振り返ることで、今の自分自身と自分を取り巻く人間関係を客観的に見られるようになり、これからの人生を考える上でも大いに役立つという。
■トニー谷なら自身の過去をどのようにエンディングノートに書くだろうか
人には誰しも、傍目には「大したことないよ〜みんなそうだよ〜」であったとしても、他人に知られたくない過去、見せたくない自分がある。ましてトニーのように、自分では選べない、そしてどうしようもできなかった「家庭の事情」をどうすればいいのか。もしも1980年代末期に、「エンディングノート」が当たり前だったとしたら、トニーは何を書き記しただろうか。
肝臓ガンにかかり、もう助からないと自覚していたのか。トニーは病床の中で、妻にひたすら「ありがとう」と語りかけるテープを残していたという。「過去」を振り返るより、「今」しか見ずに、日本の戦後の混乱期を生き延びて一時代を築いたトニーらしく、自身の「黒歴史」を詳細に書き記すことはなかったかもしれないが。