私が長編を書かない理由 円城塔、新作『文字渦』を語る(3) (1/3ページ)

新刊JP

『文字渦』(新潮社刊)の作者、円城塔さん
『文字渦』(新潮社刊)の作者、円城塔さん

出版業界の最重要人物にフォーカスする「ベストセラーズインタビュー」。

第102回となる今回は、新刊『文字渦』(新潮社刊)が話題を読んでいる円城塔さんが登場してくれました。

『文字渦』はその名の通り「文字」への偏愛と奇想が渦巻く作品集。「こんな字あるの?」と驚いてしまう漢字や、所狭しと並ぶルビ、文字でできたインベーダーゲームなど、作品のストーリーだけでなくめくったページのビジュアルにも圧倒されます。

今回は、2007年のデビュー以来「小説」の概念を揺さぶる作品を世に出し続けている円城さんに、『文字渦』のこと、あたためているアイデアのこと、そして仕事や小説のことなど、広くお聞きしました。その最終回をお届けします。(インタビュー・記事/山田洋介)

■「長編こそ王道」の出版界で短編を書き続ける理由 ――円城さんの作品はキャリアを通じてほとんどが短編です。長編を書きたいという気持ちはないのでしょうか。

円城:全然ないです(笑)短編が好きというのもありますが、長編はうまく書けないというのもあります。まずキャラクターがしっかり立っていないと長編にならないのですが、僕の小説の登場人物は大抵○とか△とか記号的ですし、そもそもあまり人間が出てきません。今回の本だって、主人公はほとんど「文字」ですしね。

どうも文学の世界は「長編こそ王道」みたいなところがあって、短編をある程度発表すると長編の依頼が来るのですが、僕は長編で何を書いていいのか未だにわかりませんし、「1文字だけ売りたい」なんて言うような人間ですから、できるだけ働きたくない(笑)。

――短編だけで生活している作家の方は珍しい気がします。

円城:純文学系の雑誌に掲載している作家は、割と暮らしていけているんじゃないですかね。今後どうなるかわからないですが。自分の場合はデビューしてから不思議と本の売上げは変わらないですし、やっていけています。

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