口下手な「選手会長」が得る信頼。日大ゲーム主将、FL須藤拓真。 (1/2ページ)
試合中はとにかく動き回る。信頼のバックロー
きついときにも誠実な言葉が自然に出る情熱の男人前に立つのが得意でないことは自分でも分かっている。そんな大学4年生が、ラグビー人生で初めてゲームキャプテンに指名されたのは、今年の夏合宿も終盤にさしかかった頃だった。
日大のFL須藤拓真(すとう・たくま)。群馬の強豪・明和県央高出身。172センチ、95キロ。昨季からFWの中心選手ではあるが、役職は特になし。
この夏、主将や副将らリーダー達がケガなどで相次いで試合に出られない緊急事態となり急きょ、その大役が回ってきた。首脳陣が冗談半分で「選手会長」と呼び始め、今ではその肩書きが定着している。
目立つプレーをしなくても絶大な信頼を得ている。走行距離やタックル数などの個人スタッツを分析すれば、常にFWトップの数値。
「ゲインしたり抜けたりするわけでもないけど、運動量を上げて、セービングとか、泥臭くやっていくことだけは心がけています」
とつとつと紡ぐ言葉にプライドがのぞく。試合後は必ず体のどこかを痛めているが意に介さない。
FWを鍛える川邊コーチも「最短距離で真っ直ぐボールに飛び込んでいく」と感心する。ノーサイドの笛まで姿勢低くイーブンボールに執着し続ける存在。玄人好みのプレーヤーだ。
集団を率いるような経験はこれまで皆無に等しかった。3人兄弟の真ん中。生来自己主張をしてきたタイプでもない。
「試合までの間に声を掛けてベストな雰囲気に持っていくのが大変。言葉がなかなか出てこなくて…」
柄にもなく「リーダーとは」とネット検索してしまったこともあるという。
スタッフが明かしたのは、飲み会での「泣き上戸」という一面。人知れず重圧を感じているのではと心配にもなるが、だいたい覚えていないそうだ。
「嫌だとまでは思っていません。