キャリア官僚がコピペミスで自殺未遂。自分の「異常性」に気付かないのは何故か (1/3ページ)
たった一つの単純なコピペミスに責任を感じ、自殺未遂を起こしてしまう。
「そんなまさか」と思えることが、現実に起きている。そして何よりも、当事者は自分自身が「異常な行動を取っている」とは思っていないのである。
精神科医の西多昌規氏は、そうした自分の「異常性」に気づけない人たちと数多く向き合ってきた。強過ぎる被害妄想、しつこい他者攻撃、そしていくら人を傷つけても罪悪感がない――そんな心の病理と対処法を明らかにしたのが『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社刊)だ。
■単純な凡ミスが壊した「仕事に対するプライド」冒頭に紹介した、コピペミスから自殺未遂に至ったケースは、某省のキャリア官僚が起こしたものだ。
名は恵一郎といい、入省から12年、家族を持ち、子にも恵まれながら真面目に働いてきた。しかし、ここ最近、人員削減や国政の混乱から、これまで経験したことのない疲労を感じることが多くなっていたという。
終電を逃し、タクシーで帰宅。すでに妻も子どもも寝ている。自分も少しばかり寝て、朝6時にはまた仕事場に向かう。それでも睡眠不足には強い方だと自覚していたそうだ。
彼が担当していた事業の中間報告書をまとめる時期になり、表計算ソフトでの経理作業が増えた。そんなある日、間違えた数字をワープロソフトにコピー&ペーストしてしまったのだ。
ただ、このミスは業務上致命的なものではなく、傍から見ても単なる凡ミスである。
しかし、このミスに対して人一倍ショックを受けたのが恵一郎自身だった。彼はこうした凡ミスをほとんど犯したことがなかった。その衝撃が、ミスをした自分に対する自信や信頼を大きく揺らがせた。
彼の激務を支えていた仕事に対するプライド。それが一つのミスで瓦解する。それでも激務は納まらない。ますます凡ミスを深刻に考えるようになり、2ヶ月、まともに眠れた日はなくなっていた。
恵一郎が恐れていたのは、自分に対するバッシングだ。官僚という仕事ゆえ、国政に対する影響も大きい。自分が政治家や国民から罵倒される姿が思い浮かぶ。