「夢中になれるものが見つからない」と悩む人たちへの小説家のメッセージ (4/5ページ)
正しいのはこっち」と言っても信じてもらえない状況は確実にあって、それが科学の情報を発信している人たちが感じている無力さにつながっています。
それに対して昔は怒りを感じていたけれど、最近は「人は信じたいものを信じて生きるしかない」と考えるようになっていて、もうしょうがないことと捉えています。ただ、そのことで情報弱者の人たち、社会的弱者の人たちが不利益を被る状況が生まれているならば、それは絶対に許してはいけない。そこはまだ怒りを覚えますし、いかに止めるかを考えなくてはいけません。
藁にもすがる想いで情報を集めている人たちにつけ込むことは許せないですよね。医学で起きている「ニセ医学」の問題は正にそういうことなのだと思うのですが。

伊与原:うーん…僕自身はみんながみんな夢中になれるものを見つけることは難しいと思っています。
むしろ、夢中になれるものを見つけられた人がいるということが大事で、そういう人たちが強いこだわりを持って、周囲の人たちが世俗的なことに捉われている間に、そこから離れて夢中になるものを追いかけ続けて、科学や技術の発展に大きく貢献している。それが学者であり、発明家であり、オタクと呼ばれる人たちなのではないかと思います。
実際、今のITの基盤をつくった人たちも、地位や名誉、お金とは無縁の好奇心だけでプログラムやコンピューターを開発してきた側面が強いですよね。もちろん、みんながそうなるのは難しいけれど、人の視線も気にせずに夢中になれるものがある人がいるということ自体が大切なんじゃないかと。