免疫学者が免疫系の仕組みを日常生活や職場に例えてわかりやすく説明。海外版、はたらく細胞 (4/4ページ)

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 免疫学の大きな研究テーマの1つは、いかにしてそのバランスを取り、病気の治療に適切な免疫反応を作り出すかを探ることだ。


・4. 最高のパフォーマンスを出すためライフバランスを取る

 勤勉なのは結構だが、ずっと働き詰めでは最高のパフォーマンスは出せない。これは免疫細胞にも言えることだ。

 働きすぎの免疫細胞は慢性疲労状態にあり、そうなるとT細胞はガン細胞やウイルスに感染された細胞をうまく攻撃できなくなる。疲れ切った人間と同じように、活力に乏しく非効率だ。

 T細胞にとって、こうしたオンとオフを切り替えるスイッチには、バランスのとれた免疫反応を行い、巻き添えを出してしまうことを避ける意味もある。

 しかしウイルスやガン細胞はここに付け込んで、わざと免疫の疲労を起こさせるという戦略を取る。

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 発展が目覚ましい免疫療法の分野では、免疫のこの限界に取り組んでいる。免疫を利用した新しいガン治療では、疲れた免疫細胞が再び元気に働けるよう、リフレッシュさせるための一工夫がある。

 それを可能にする免疫チェックポイント阻害因子は、T細胞にとっては日々の活力を取り戻す温泉のようなもの。発見者のジェームズ・P・アリソンと本庶佑はその業績を評価され2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。


・5. 人生経験から学ぶ

 順応性の高い免疫チームのキモは、過去に起きた感染を記憶しておく力だ。このおかげで、以前遭遇したことのある病原菌ならば、慌てることなく迅速かつ整然と対応することが可能になる。

 ワクチンとはつまりこの力を利用したもので、病原菌に感染する危険を冒さずに、免疫細胞にその記憶を覚えさせるやり方なのである。

 だが迅速な免疫反応を支える細胞の記憶形成を最適化する方法は、まだまだ研究することがたくさんある。
 
 マラリアやエイズといった手強い感染症ををターゲットとするために最も効率の良い記憶の種類やその作り方を発見しようと、研究者は日夜励んでいるのだ。

References:Five life lessons from your immune system/ written by hiroching / edited by parumo
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