世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第306回 お化粧しても「悪い」日本経済 (2/3ページ)
供給能力を上回り、生産できないモノやサービスが「売れた」というわけである。 「そんなバカな」 という話なのだが、なぜこのような意味不明な統計になるのか。理由は、内閣府が潜在GDP算出の際に、元々の「国民経済のすべての設備、労働者が稼働したときに生産されるモノ・サービス」ではなく、「過去に生産されたモノやサービスの平均」という、奇妙奇天烈な定義を用いているためだ。
例えば、自己ベストタイムが10秒の100メートル走のアスリートが「最短タイムは何秒ですか?」と問われれば、もちろん「10秒」と答えるだろう。「過去の平均タイムは11秒」などと答える人はいない。
ところが、こと潜在GDPの統計の際には、「最大の生産量」ではなく、「平均の生産量」が供給能力として設定されてしまっているのだ。「最大の生産量」で供給能力を図る考え方を「最大概念の潜在GDP」、内閣府などが用いている過去の平均をとった「インチキ供給能力」を「平均概念の潜在GDP」と呼ぶ。
潜在GDPを用いると、供給能力が「小さく見える」ことになってしまう。結果的に、総需要が供給能力を上回り、インフレギャップが「統計」できるという、摩訶不思議な状況になってしまうのだ。
ちなみに、日本政府は需給ギャップの算出時に、元々は最大概念の潜在GDPを使っていた(当たり前だが)。それを小泉政権期に「デフレギャップが小さくなり、デフレ状況ではないように見えやすい」平均概念の潜在GDPに変えてしまったのは、竹中平蔵氏である。
さて、本稿のポイントは平均概念の潜在GDPというインチキ定義ではない(これも問題だが)。それ以上に重要なのは、デフレギャップが小さくなりやすく、かつインフレギャップが明示化されてしまう、平均概念の潜在GDPを用いたインチキ需給ギャップですら、’18年Q3(7―9月期)はマイナスになってしまったという点である。
実際のデフレギャップ(最大概念の潜在GDPを用いた場合)はもっと大きいのだろうが、いずれにせよ日本がデフレ脱却していないことに変わりはない。
あるいは、第289回で取り上げた、賃金統計の「サンプル変更」。給料が高い事業所群と、給料が低い事業所群を入れ替えた。