識者が語る ロシアに経済制裁が効かない本当の理由 (4/5ページ)
加藤: 地政学的な面では、漠然とした言葉になりますが言葉や文化、宗教も含めて「ロシア的なもの」を保護し、守りたいという意識があるんだと思います。ウクライナ東部からベラルーシにかけて、あるいはカザフスタン北部などにも、ソビエト崩壊の時に散り散りになったロシア人がいる。だからこういう地域はプロテクトしないといけないと思っているのではないでしょうか。
――経済面はいかがですか?加藤:経済面でのプーチンの目標は「強いロシアをつくる」に尽きるでしょうね。健康不安があったり政商の跋扈を許したエリツィン元大統領の後を引き継いで、1998年のデフォルトの記憶が生々しい中で出てきたプーチンですから、とにかく実益に徹して強いロシア経済をつくるという意思がはっきり見て取れます。
やり方は極めて開明的です。アメリカやイギリスのように壁を作って自国の産業の再興を図るのではなく、グローバリゼーションと自由主義経済の中で競争力を高めていこうという。こと経済に関してはプーチンにはあまり国境の概念を感じません。
――旧ソ連で育ち、KGB(ソ連国家保安委員会)時代は東ドイツに赴任するなど共産主義の中で生きてきたプーチンが今自由主義経済の信奉者になっているのがとても興味深いです。加藤:いかにもスパイですといった外見ですから、プーチンはKGBではあまり大成しないだろうと言われていたそうです。東ドイツ時代も最前線の本当に難しい仕事は任されなかったかもしれません。
台頭してきたのはサンクトペテルブルクの副市長になって、外資の誘致など対外関係を取り持つ仕事をするようになってからです。彼はそういう仕事が得意だったみたいですね。全然得意そうには見えないのですが(笑)。
いつどのように自由主義経済を志向するようになったのかはわからないのですが、ソビエト時代から海外を広く見ていますし、東ドイツにいた時は西ドイツの様子も目の当たりにしたでしょうから。
一方で彼はロシア経済が行き詰まり、疲弊していく様子も見ていますから、どうしたら周辺の国のように皆が一定の豊かさをもって暮らせるのかっていうところを考えたんだと思います。