葬儀や墓場から遺体や亡骸を奪う妖怪「火車(かしゃ)」とは (2/2ページ)

心に残る家族葬

また、火車が葬儀に現れるとその家と家族も衰退して行くと言われていたため、生前に悪事を行なってはいけないという戒めもあって、全国各地に広まったと考えられている。

なぜ猫のような姿かと言うと、昔の日本には猫を死に関わる気味の悪い動物とする伝承があり、それが死体を奪う火車の姿に繋がった。火車は江戸時代に出版された「奇異雑談集」などの古典に登場し、現在でも島根県や兵庫県に、猫ではないが死体を奪う老婆「火車婆」の伝説が継承されている。また、火車に死体を奪われないための対策を行う地域もあり、山梨県の一部の地域では、葬式を二回に分けて行い最初の棺桶には石を入れて火車に死体を奪われるのを防いでいるというのは興味深い。

■妖怪たちの警鐘

古代では、今よりも死が身近に存在した。山や川や池で人々は簡単に命を落とした。山、川、池、それらはまさに妖怪が出没する場所だ。それらは未知の世界であり異界へと繋がる空間でもある。山には鬼や天狗、川や池などの水辺には河童や海坊主が棲まい、人々はそれら妖怪への怖れを持ってそこへと足を踏み入れる。死と直結する自然の中で、妖怪たちは「気をつけろ」と人々を戒める存在でもあったのだ。そして妖怪たちは、今も私たちにふとした物陰から警鐘を鳴らし続けている。

「葬儀や墓場から遺体や亡骸を奪う妖怪「火車(かしゃ)」とは」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る