川崎市登戸無差別通り魔事件:ロマン優光連載136 (1/4ページ)

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川崎市登戸無差別通り魔事件:ロマン優光連載136

ロマン優光のさよなら、くまさん

連載第136回 川崎市登戸無差別通り魔事件

 どういう社会でも、共同体から転び落ちてしまう人間というのは生まれてきてしまう。かといって、そういう人の全てが通り魔型の犯罪を犯してしまうわけではない。同じような環境にあっても、1人静かに朽ちていく人もいれば、近隣とのトラブルを抱えながらも迷惑な人どまりで生涯を終える人もいる。
 ああいった犯罪を犯すタイプの人間は自己の抱えた問題の原因を外部に求めがちな性質の人間が多いのは間違いないのだが、同じような資質を持っていても環境によっては平穏無事な人生をおくる人間もいる。どちらかといえば、そちらの方が大多数だ。
 変な言い方だが、結局は運なのだと思う。持って生まれた資質と環境の組み合わせが最悪な形で噛み合ってしまう人間というのはいるのだろう。やってしまう人間とやらない人間の間には大きな断層があるのかもしれないが、向こう側に渡ってしまった人間が我々とかけ離れた怪物であるかのようにとらえるのは違うのだと思う。ほんの些細なきっかけから坂道を転げ落ちるような感じで向こう側に渡ってしまう可能性は誰にだってあるだろう。大量殺人者の多くが頭部にダメージをおった経験があり、それによる脳の機能障害が彼らの凶行を引き起こさせたという説がある。また、外部からの脳への衝撃ではないが、テキサスタワー銃乱射事件の犯人であるチャールズ・ホイットマンからは脳腫瘍が発見されている。あくまで仮説にすぎず、はっきりとした因果関係が証明されたわけではないが、この仮説がもし事実とするならば、誰だって頭部に対する事故や脳腫瘍の発症による影響で、大量殺人者になる可能性があるということになる。結局、これにしたって、そういう経験のある人の大半が普通の人生を終えるわけで、決定的な何かと言えるわけでもない。
 社会から孤立した独身の中年男性を通り魔予備軍のように見なして地域で監視すれば、あのような犯罪は防げるのだろうか? そもそも、ああいった犯罪を犯すのは孤独な中年男に限ったわけではない。金川真大の例のように、若くても社会から孤立し、世間に対して理不尽な憎しみを抱いてる人間などはいくらでもいる。男性だけとは限らない。

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