たった一人で織田軍を足止めした歴戦の武者・笠井肥後守高利の壮絶な最期【後編】 (4/6ページ)

Japaaan

死ぬの生きるのと慌てたところで、活路はいつも前にしかない……!)

激戦の疲れからふと心に生じた迷いを完全に振り切って、高利は槍を構え直しました。

「何としてでも喰いとめる!」……決死の覚悟を決めた笠井肥後守高利(イメージ)。

(よければ槍の餌食……先に怯んだ方が負けじゃ!)

これまで幾多の戦場で数多の敵と相まみえ、命のやりとりをしてきた中で、この賭けに負けたことはありませんでした。

己が槍を信じよ。己が武を信じよ。己が天命を信じよ。守るべき大義を信じよ。

永年にわたり研ぎ澄ましてきた槍の穂先のその先の、敵の命さえ見透かした向こうには、いつも「武田家の御為」すなわち「君民幸(さきわ)う甲州の夢」がありました。

一点の疑いもなく大義を信じ、駆け抜けてきた高利だからこそ、敵は怯み屠(ほふ)られ、尊い命を軍神(いくさがみ)に奉げて来たのです。

しかし、此度の敵である源右衛門もまた、高利と同じく「織田家の御為」すなわち「天下布武」の大望を信じ、それを微塵も疑いませんでした。

……かくして両者一歩も譲らず、互いの槍で互いを貫き合って源右衛門は馬上より転げ落ち、高利は即死して大文字に果てたのでした。

その場でこそ辛うじて武運をつないだ源右衛門でしたが、高利から受けた槍の傷は深く、翌日息を引き取ったため、実質的には相討ちと言えるでしょう。

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