情報セキュリティの専門家が指摘する「ビットコインの消滅」と「新たな暗号貨幣・クリプトキャッシュの登場」 (3/4ページ)
実際、(一社)日本クレジット協会の発表によれば、2017年のクレジットカード不正利用被害額は236.4億円にのぼるという(*1)。また、インターネットバンキングについても、警察庁が2018年に発表した資料によれば2017年の被害総額が10億8100万円(被害件数425件)となっており(*2)、ピーク時と比較すれば被害は減少しているものの、被害があるということは事実だ。完全な「安全」はない。
他にも9月末でサービス終了が発表された「セブンペイ」は、7月のサービス開始直後に不正アクセスが相次ぎ、7月31日の段階で被害者が808人、およそ3860万円にのぼる被害総額が出ている。
著者はサイバーセキュリティに対して企業側の後ろ向きな対応を指摘しており、セキュリティ機器の選択においても、セキュリティ性能よりオペレーションの利便性が優先されている現状を明かす。
「便利になるならセキュリティ面において多少の被害は目を瞑る」と考えている人もいるかもしれないが、いざ自分が被害者になったときに同じことが言えるだろうか。
お金を含む私たちの情報が「守られている」とは到底言い難い状況が、著者の指摘によって明らかになっているのが本書なのだ。
仮想通貨もクレジットカードもセキュリティ面に難を抱えている。では、完全に安全な暗号技術とは一体どういうものなのか。そこに挑んだのが本書の著者である中村氏である。
中村氏の提唱する「暗号貨幣(以下、クリプトキャッシュ)」は、「仮想通貨」登場よりはるか以前から多くの研究者によって研究・開発が行われてきたもので、その発端は1983年のデヴィッド・チャウム博士の論文までさかのぼるという。著者自身は1995年からこの研究の流れに加わった。
当時マッキンゼー・アンド・カンパニーに所属していた中村氏は、大手企業の依頼からデジタルマネーの普及の可能性を確信したが、同時にインターネット通信のセキュリティ面の問題を解決することが必要と判断する。そして、家業の建設会社を継承、自身の研究所を設立し、1996年後半にはMITに客員研究員として戻り、日本とアメリカを行き来しながら研究を進めた。