「セキュリティは不十分」 情報セキュリティ専門家が指摘するキャッシュレス社会の落とし穴 (4/6ページ)

新刊JP

■そして完成を見た「暗号貨幣(クリプトキャッシュ)」とは? ――本書は初めての単著になりますが、そういう思いもあってご執筆なされたのですか?

中村:いえ、この本のテーマは「暗号貨幣」ですから、仮想通貨崩壊の警告については2~3ページくらいでとどめたかったのですが(笑)、今の仮想通貨があまりにも危険な状態にあるわけですよね。その点についてはちゃんと警告を発するべきだったと思いますし、もう被害が出ているとはいえ、ここで書かなければいけないと考えて「ビットコインの消滅」に1章を割いたんです。

また、仮想通貨についての書物やインターネット上にありふれている情報は間違いが多いんです。ただ、仮想通貨に関わっているほとんどの人は専門的な暗号の研究を積んだ専門家ではないですよね。だから分からなくても仕方ないと思います。「論文に書かれているから正しい」のではなく、論文にも間違いがあるということをしっかり伝えていかないといけないと考えました。

――中村さんが暗号技術を研究するようになった経緯はどういうものですか?

中村:簡単に経歴をご説明しますと、慶應義塾大学理工学部前期博士課程在学中の1988年、アメリカのマサチューセッツ工科大学(以下、MIT)に留学したのですが、当時世界では第二次人工知能ブームが起きていて、私もその熱の中にいました。ただ、なかなか上手くいかず、1990年代初めにこのブームが急激しぼむんですね。私も自分の研究の方向性について改めて考え、マッキンゼー・アンド・カンパニー・ジャパンに就職します。

そのマッキンゼーの時代に、大きな出来事が起きます。1995年にWindows95がリリースされ、一般向けブラウザ「NetScape」が出てきました。これで一般の方々がインターネットを使うようになったわけですが、そうなるとネット上で使えるお金をつくろうという動きが出ますよね。私は大手企業の依頼でデジタルマネーの現地調査を行う機会を得て、そこで多くの試みが理論的根拠としていた暗号学者のデヴィッド・チャウム博士の論文を読ませていただく機会を得ました。

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