「セキュリティは不十分」 情報セキュリティ専門家が指摘するキャッシュレス社会の落とし穴 (5/6ページ)
とても難しい内容ではあるのですが、暗号技術さえ成熟すればネット上でも現金を作り使うことが可能ではないかと分かりました。
となると、会社をやめて研究に戻りたくなりますよね。そしてアメリカに戻り、MITの客員研究員として暗号技術の研究・開発をやってきたという経緯です。
――その暗号技術は完成されたのですか?中村:本書を執筆させていただいているわけですから完成しています。完成したのは2005年のことなので研究・開発そのものは10年あまりでした。これだけ早く完成できたのは、MITで研究をさせてもらったということが一つ大きな要因だろうと思います。クロード・シャノン博士の導き出されたフレームワークに気づき、それを応用したところうまくいきました。
――「暗号貨幣(クリプトキャッシュ)」とはどのようなものでしょうか。中村:言葉通り、「暗号を使ったキャッシュ」です。どのようにネット上でも流通するお金を作るかということは、先ほど申し上げたデヴィッド・チャウム博士が1983年に書いた論文からの課題でした。
この課題がクリアできれば、2つのことが暗号貨幣を通して実現できる。1つは偽造ができない。もう1つが不正使用できない。つまり、完全に安全な通貨となるということです。デヴィッド・チャウム博士はその筋道を作っていたので、未成熟だった暗号技術の研究を進めることだけを考えました。
ただ、今、私たちが開発しているクリプトキャッシュはチャウム博士の論文よりももう少し簡単な仕組みになっています。
例えば、コインロッカーに100万円を入れておきます。それを開けられるのは、世界に1つしかない偽造できない鍵。となると、この鍵を持っている人が100万円の所有者であると当事者間で確認できていれば、鍵がコインロッカーにある100万円の引換券になりますよね。つまり、鍵そのものが100万円の価値を帯びることになる。
この鍵を完全に安全な暗号で作ればいい。クリプトキャッシュの本体は英数文字等からなる記号列となっていて、発行者が誰で、いつ、どのくらいの価値で発行しているかを暗号化しています。偽造はできず、不正使用もできません。