【小説】永すぎた春/恋愛部長 (2/6ページ)

ハウコレ

真由よりも10歳も年上で、落ち着いた雰囲気の外資勤めの男で「いつかは海外に移住するのが夢だ」と語った。

真由は、新しく誰かと出会うと、必ず奏多と比べる癖がある。

米澤は、奏多よりも背が高く、がっしりしていて、奏多よりも大人だった。そして、少しシャイで、だいぶ知的だった。

奏多は、時々子供のように思えることがある。変なことで意固地になって、ふくれてしまうと、会話もしなくなる。機嫌が直るまでは、真由はなにかと気を回さなければならない。米澤は、きっとそんな子供っぽいことはしないだろうと思えた。

仕事でよくヨーロッパに出張すると言う彼は、洗練された身のこなしで、2軒目のバーでも、真由を完璧にエスコートしてくれた。

真由は、久しぶりの男性との親密な会話に、忘れていたときめきを思い出していた。ウィスキーのグラスをつかむ、長い細い指が、節張っていてとてもきれいだ・・・・・・、とぼんやり思う。

外へ出た瞬間、車道側から歩道側へと誘導するために、軽く腰に手を回された。

その時、胸が早鐘のように高鳴った。そのまま抱きしめられたら、間違いなく目を閉じて受け入れてしまっただろう。

真由は、勝手に盛り上がる妄想を必死に押さえつけながら、笑顔をつくって、米澤に言った。

「私は、少し歩いて帰るので、もうここで」「1人で大丈夫? だいぶ飲んでたけど」

少し心配そうに米澤が覗き込む。頭1つぶんも、背が高い。真由は頬を押さえて、退いた。

「うん、大丈夫」「ご家族と一緒に住んでるの?」「え・・・・・・、あ、ううん。1人」

咄嗟に嘘が口をついて出た。

「そうか、ホントに気を付けて。今度、一緒にオクトーバーフェスト行く約束忘れないでくださいね」

やわらかく言って米澤は笑った。そうだ。次に会う約束もしたんだった・・・・・・。

真由が、奏多以外の男性をデートに誘うのは初めてだ。うしろめたさはまったく感じなかった。ただ、ときめきだけが、胸にあふれていて、痛いくらいだった。

「それじゃ、また」

ふわふわした足取りで、真由は、奏多と暮らす家に帰ったのだった。

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