プロ野球選手が道路を渡って怒られた:杉作J太狼XE「美しさ勉強講座」連載109 (1/3ページ)
軟弱な男たちの姿に見かねて、あの先生が立ち上がった!
杉作J太狼XE先生の「男の偏差値がぐんとアップする美しさ勉強講座」
とにかくキビシイ世の中になってる。
プロ野球選手が横断歩道でない場所で道路を渡って厳重注意処分となった。
先だってはエロ本がコンビニから姿を消し、その勢いは水着グラビア掲載誌にまで向かっている。
そのそれぞれに問題意識を持つ人の思考は、ま、わからないではないし、そう感じたり思う人もいるだろうなとは思うが、そうしたことの影響だろうか、たまに会う人のなかに、モーレツに縮こまった姿勢を感じることがある。
「そんなこと言って大丈夫ですか」
とか、
「そんなことしてたら怒られませんか」
とか。
別にたいしたことはしてない。実際、誰かに怒られるわけでもない。
ロバート・アルトマン監督『ロンググッドバイ』(1973年)の中に、収監されている男がこのままでは鼻を所持している(顔の中に鼻がある)、口を所持している(顔の中に口がある)だけで逮捕される世の中になってしまう、とぼやく場面がある。その男は精神状態が薬物の使用により不安定になってでたらめなことを言っている、という描写だが。ロバート・アルトマンほどの男がただ笑いをとるだけとか、間つなぎにそうしたセリフを喋らせたとは思えない。なんらかのリアリティを感じて喋らせているのだ。実際、『ロンググッドバイ』という映画は全編リアリズム。すべて別々の世界のリアリズムをひとつの物語の中にぶちこんでいる。そのぶちこみ具合がとにかく濃密でその濃密さに反してスカスカの物語というアンバランスが見る者を魅了する。
いずれ鼻を所持している、口を所持しているだけで処罰されることなどいくらなんでもなかろうとかつて見た時に思った俺は甘かった。
世の中はそこに向かっている。
恐ろしいことにこれは日本だけのことではない。欧米からも、アジアからも、そうした話題が報じられている。