工藤會 法廷闘争 検察と警察による暗黒裁判のシナリオ 寄稿・宮崎学 (2/4ページ)

週刊実話

本来の「暴力団」は法人ではなく、法的には町内会などと同じ任意団体であり、基本的には非課税とされる。そこで警察当局は、会費として集められた金を代表者に流れた「個人所得」として、野村総裁に脱税の容疑をかけたのである。

 この逮捕は当局の“ウルトラC”として話題になったが、平成30年7月の一審では懲役3年、罰金8000万円の有罪判決が言い渡された(現在、控訴中)。今月から始まる公判では、元漁協組合長射殺、福岡県警の元警部銃撃、看護師襲撃、歯科医師襲撃の4事件が、田上会長と共に審理される。元漁業組合長射殺事件は殺人罪、他の3件は組織犯罪処罰法違反の罪である。

 起訴状などによると、野村総裁は元漁協組合長射殺に関与し、他の3事件については配下の組員に犯行を指示したとされている。野村総裁は取り調べに対して否認を貫いたが、当局にとっては想定内のことであり、“外堀”を埋める作業を進めてきた。検察と警察は野村総裁と田上会長の身柄を確保した上で、事件に関わった傘下組織の者たちの捜査と裁判を先行させたのだ。

 組員たちの裁判を通じて既成事実を積み上げていき、トップを落とす。工藤會に限らずヤクザに対して過去に何度も行われてきた手法である。このことで、弁護団は公判に先立ち裁判長、裁判官ら3名について忌避(※事件の職務執行からの排除を求める申し立て)を行ったが、却下された。

 弁護団のA弁護士は、こう説明する。
「元漁業組合長の事件以外の3件は、先に行われている組員の裁判で、野村総裁の指揮命令下で行われたと認定され、刑が確定しています。今回の公判も、その裁判官が担当することになっているのです。最初から予断をもって審理されるのは明らかで、刑事訴訟法第21条で定める忌避理由である『不公平な裁判をする虞れ』があります。さらには、最も尊重されなければならない憲法37条1項の『公平な裁判所の裁判を受ける権利』も保障されません」

 野村総裁と弁護団が、相当な苦戦を強いられるのは明らかである。

 また、今回の裁判には他にも問題点がある。例えば、元漁業組合長への射殺事件。今から21年前に発生し、すでに実行犯らの判決は確定している。

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