プロレスラー世界遺産 伝説のチャンピオンから未知なる強豪まで── 「ケンドー・カシン」ファンを煙に巻く制御不能の“悪魔仮面” (2/2ページ)

週刊実話



 ’99年1月にIWGPジュニアタッグ王座を獲得(パートナーはドクトル・ワグナーJr.)、5月にベスト・オブ・スーパージュニアで優勝すると、8月には金本を破りIWGPジュニア王座も奪取した。
「勝利者トロフィーを投げ捨て、認定書を破り捨てるなどはざらのことで、自作のベルトを巻いて本来のベルトを足蹴にすることもありました」(同)

★唐突なコメントの裏にある真意

 カシンは発言においても、制御不能ぶりを加速していく。

 ’99年9月、ジュニア王座の初防衛戦でライガーを下した後、記者からの「おめでとうございます」の声に「うん、余計なお世話だ」と返答。

 スーパージュニア優勝後には、テレビ朝日の真鍋由アナに「お前、これ換金して寄付しとけ、ネコババするなよ!」「コソボだ、コソボ!」と、賞金として受け取った500万円の小切手ボードを投げつけた。

 当時、紛争状態にあったコソボに寄付というのは、善行には違いなかろうが、プロレスラーの発言としてはあまりにも唐突である。

 しかし、これには裏事情もあったという。
「当時、新日からの賞金というのは発表したものよりもかなり少額だったそうで、あのあとカシンは100万円をコソボに寄付しているのですが、これはつまり実際の賞金が、500万ではなく100万だったという告発の意味もあったのでは?」(同)

 もっともカシン自身は多くを語らないため、真意がどこにあったのかは分からない。

 全日本プロレス移籍後、世界タッグ王座のベルトを返還せずに訴訟騒ぎになったことも、自身に対する契約のいい加減さや、元全日役員への給与未払いに対する抗議の意味からだったとする説もある。しかし、これも結局のところ真相不明のままだ。

「NHKの朝ドラ『マッサン』では、毎回、エンディングで国際結婚したカップルの写真を紹介していたのですが、ある日そこに素顔の石澤と奥さんらしき女性、幼子2人の家族写真が登場したことがありましたが、これもカシンは『人違い』で通しました」(同)

 かつてプロレスの魅力の一つには、“未知の強豪”や“謎の怪物”などのミステリアスさがあった。

 ネットやSNSの発達でそれが難しくなった現在において、マスクと素顔、プロレスと格闘技を行きつ戻りつしながら、ファンに謎を提供してきたカシンは、極めてプロレス的に貴重な存在であろう。

ケンドー・カシン
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PROFILE●1968年8月5日生まれ。青森県南津軽郡出身。
身長181㎝、体重87㎏。得意技/飛びつき式腕ひしぎ十字固め。

文・脇本深八(元スポーツ紙記者)
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