大ヒット作『ツナグ』ふたたび!続編執筆の裏側とは (3/4ページ)
辻村:今回の再会は、前作とは趣向が違うものが多いのですが、中でもたぶん、一番その色合いが強いのが第二章の「歴史研究の心得」だと思います。これも映画の時ですが、出演された俳優の皆さんが「死者に会えるなら誰に会いたいですか?」という質問を公開時の取材で受けられていたんです。
その中で主演の松坂桃李さんが「宮本武蔵に会いたい」と仰っていて、自分にはなかった発想だったので驚きました。確かに「ツナグ」の「死者に会える」というルールでは歴史上の人物という選択肢もあり得る。ただ、もしそれを希望するとしたら、時代が違うことできっと言葉も違うだろうし、大変なことも多そう。どんな準備が必要で何をしないといけないかというのを小説の中で大真面目に考え始めたら、とても楽しかったんです。そこで「やってみよう」と。
――個人的にも「歴史研究の心得」が一番好きです。依頼人が会いたいと希望するのは戦国時代の領主「上川岳満」。読んでいて気になったのですが、この人物は実在していたのでしょうか?辻村:読者のご想像におまかせしたいところなのですが、実は私が創作した人物です(笑)。読後に読者が思わずネットで検索してくれるようなリアリティーを持たせたい、と考えながら人物像を作り上げていきました。
――やっぱり!いかにもありそうなキャラクターづけがされているので実在の人物だと思ってしまいました。辻村:キャラクターはもちろん、そのキャラクターが登場するためには「架空の歴史」が必要なのですが、これを書くのも楽しかったです。歴史ものは自分には縁遠い題材だと思っていましたから、こんなに大胆なことが書けるとは思いませんでした。
――「架空の歴史」のポイントになるのが、岳満が残した「和歌」です。これは専門の方にお願いしたと聞きました。辻村:「yom yom」で連載していた時点では別の和歌を引用していたのですが、やはり時代背景も含めてぴったりくるものを入れたかったので、本にする際には俳人の川村蘭太さんにお願いして作っていただきました。
すでにある物語の中の流れに沿って、著者と小説の都合に合わせた歌を詠んでいただかないといけないわけで、しかも作中では、依頼人の男性から「あまりうまくない歌」と言われたりもしてしまっている(笑)。