大ヒット作『ツナグ』ふたたび!続編執筆の裏側とは (4/4ページ)
そんな予め定まった枠組みの中に入れ込む歌を作るというのは、ともすれば乱暴なお願いごとだというふうに取られても無理はないと思うんです。私も覚悟の上でのお願いだったのですが、川村さんはものすごく柔らかい感性を持っていらっしゃる方で、物語としての『ツナグ』がどういうものなのかを理解してくださったうえで、何案も考えてくださったんです。歌一つ一つに注釈をつけてくださったのですが、それを読んでいると、楽しみながら歌を作ってくださったことが伝わってきて、ぐっときました。
――それはありがたいですね!辻村:本当ですよね。研究者の領域にお邪魔するわけですから恐縮していたのですが、フィクションの持つ力だとか物語や小説がどういうものなのかをご理解くださる方と巡り合えたことで、小説により奥行きが出たと感じています。
――依頼者の鮫川老人が上川岳満と会うことで、岳満の和歌の真意が明らかになるところが好きです。私たちは歴史や歴史上の人物が残したものについて様々に解釈しますが、実際に本人に会った人間は誰もいないわけで……辻村:歴史小説や大河ドラマになぜ人が惹きつけられるかというと、今までいわれていたのとは別の人物像や歴史解釈が提示されることも理由の一つにあると思うんです。
歴史の解釈にはどうしても語る人の主観が入りますし、私たちが学校で学んできた歴史も、圧倒的に「勝った方」にスポットライトが当たっていて、「この人が正義で、この人は敗者」という目線ができてしまいやすい。でも、私たちが知っていると思っている歴史は誰かの主観であって、それだけが正しいことではないのかもしれないということは「歴史研究の心得」と銘打って書くなら必ず入れたいと思っていました。
第二回 ■もし「ツナグ」が実際にいたとしたら…… につづく