世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第347回 道徳的に正しい経済 (3/3ページ)

週刊実話

グローバリズムの政策を20年も続けた我が国がどのような社会に変貌を遂げたのか、目の前の現実を見れば分かるだろう。

 ちなみに、筆者は別に市場を否定しているわけではない。自己利益最大化のみを追求するグローバリストのレトリックを批判しているにすぎない。市場に任せた方が「経世済民」につながる財やサービスも、それはあるだろう。

 あるだろうが、「すべての財やサービスにおいて、市場が常に正しい」などあり得ない。特に、防衛や防災といった安全保障関連は、「市場」に任せることは不可能だ。防衛、防災は「国民を守る」サービスである。そして、市場に国籍はない。国家の概念がない市場において「特定の国民を守る」という発想は存在し得ない。

 それにも関わらず「神の見えざる手」という言葉が、あたかも普遍的に正しいかのごときレトリックが使われ、市場が正当化される。

 そして、緊縮財政に反対すると、「強欲的」と批判され、道徳的に間違っているという印象を植え付けられる。特に、英語に至っては、言葉そのものがそうなっているわけだから、厄介な話だ。

 恐らくこの種の問題は、過去数百年、あるいはそれ以上の期間、人間社会を苦しめてきたのだろう。

「緊縮財政は道徳的に正しい」と主張する緊縮推進派に対しては、
「いや、違う。一見、緊縮財政は禁欲的で、道徳的に正しいように見えるが、実際には『特定の誰か』を富ませるだけで、国民が貧困化し、最終的には経済や共同体が維持できなくなる」

 と、正しく構造を説明しなければならないわけだ。

 禁欲は個人の道徳として正しいのかも知れないが、「国民がみんなで豊かになる」も、間違いなく道徳的に正しい。道徳的に正しい経済は、少なくとも現在の日本では「緊縮財政ではない」という現実を広める必要がある。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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