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週刊実話

本好きのリビドー

 悦楽の1冊『映画の中にある如く』 川本三郎 キネマ旬報社刊 2500円(本体価格)

★テーマごとに再編成した珠玉のエッセイ集

 仕事で小樽へ向かうついでに、途中、北海道の「銭函」駅に立ち寄れたのは今年の夏のいい思い出になった。『駅―STATION』(1981年)の冒頭シーンの舞台に選ばれた場所で、雪降る中を目に涙をたっぷり浮かべたまま無理矢理ほほ笑む妻役のいしだあゆみがまだ幼い男の子を引き取って、離婚した刑事の夫=高倉健とホームで別れ際に、動き出す列車から泣き顔で敬礼する場面がどれだけ哀しくも切なかったことか。あの時、子供が父親にねだる弁当売り場こそなくなってはいたが、ささやかな聖地巡礼の気分が味わえたもの。

 たとえ作品全体を通しての出来がいまいちだったとしても、妙に心に引っかかる風景や些細な台詞に俳優の存在、あるいはサントラのごく一部の曲だけがやたらと耳に残ったり…とは映画好きには当然、多々あること。本書はそんな“小品佳作”と呼ばれる類、または知る人ぞ知る一本のロケ地に想いを馳せるのをはじめ、さまざまな映画にまつわる余談秘話や発見の数々が過去と現在を往還してゆるやかにつながる心楽しさに満ちている。

 軍歌『海ゆかば』が劇中流れるのは小津安二郎の『父ありき』(’42)と内田吐夢の『血槍富士』(’55)だが、『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』(’83)でも渥美清が歌うという意外さ。おまけにその『男はつらいよ』シリーズの海外版の吹き替えを、長年(つまり寅さんを英語でやるわけで、“結構毛だらけ猫灰だらけ、焼けのやんぱち日焼けのなすび”なんてどう訳したのだか)担当したのがウィリアム・ロスなる人物で、『零戦燃ゆ』(’84)にマッカーサー役で出演していた上に、最近、彼の足跡を追った研究書まで出たばかりとは。

 結局、全部見たくなる誘惑に駆られる1冊。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 2019ユーキャン新語・流行語大賞が発表された。令和になってから初めての大賞はラグビー日本代表の「ONE TEAM」。今年を代表する一語となった。対抗馬と目されていた「闇営業」は、惜しくも大賞は逃したもののトップ10入りしている。

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