本好きのリビドー (1/3ページ)
悦楽の1冊『革命とサブカル―「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅』安彦良和 言視舎刊 2200円(本体価格)
★ガンダムの生みの親が「全共闘時代」を総括
いまさら振り返れば「戦争」とは、「国家」とは何かを考える上で基礎的な語彙が自分にとってどこで蓄積されたか。昭和49年生まれの筆者に近い世代ならほとんど、子供時分に見たTVアニメ『機動戦士ガンダム』からの吸収ないし刷り込みが圧倒的ではなかろうか。少なくとも小学校の図書室に備え付けの『はだしのゲン』より影響力はずっと、な気がする。
“捕虜の待遇を定めた南極条約”なんて軍事や政治の専門用語はもちろん、「大気圏」の存在も、敵側として登場するジオン公国の兵が叫ぶ「ジーク・ジオン!」のジークがドイツ語で「勝利」を意味し、どうやらナチスがモデルらしいことも、あるいは魅惑的な響きの宇宙要塞の名「ア・バオア・クー」がボルヘスの著作に出てくるインドの幻獣を指す…などみんな「ガンダム」から教わったもの。その作者である安彦良和氏がバリバリの全共闘世代だとは無論のちに知るわけだが、かつて学生運動に身を投じた仲間、同志、はたまた敵対関係にあった人々との再会と対話を通じて、60年代末から70年代半ばまでの俗に云う“政治の季節”の再検証、ひいては戦後史の総括を模索する試みの本書。さながら思想版『舞踏会の手帖』の趣きとはいえ、史上空前の悪書といまだに誉れ低い『全共闘白書』の類とは厳しく一線を画す緊張感に満ちた読み応えなのは、安彦氏の精神が弛緩とも硬直とも無縁なゆえだろう。
’72年の浅間山荘を取材した新聞記者の父とその文章に興味を抱いた母が出会った結果この世に生を受けた筆者にとって、連合赤軍事件は単なる歴史年表の一項目、赤の他人事では決してない。全共闘=ガラパゴス左翼などと一括りにして片付けた錯覚に陥る愚を犯さぬためにも、この大冊、熟読が必要だ。
(居島一平/芸人)
【昇天の1冊】
『日本の特別地域特別編集』(マイクロマガジン社/1400円+税)と題された本をご存じだろうか。全国都道府県と各地の主要な市、東京23区まで、各地の魅力を徹底解剖した上で、でも、何だか欠点も不安もあるぞ…と、重箱の隅をつつくように問題提起するシリーズである。