桃太郎には桃から生まれた「果生型」と、おばあさんが若返る「回春型」の2パターンある【1】 (3/5ページ)

Japaaan

「語り」は絵本の読み聞かせでなく、記憶した物語を、何も見ず語り聞かせることを指します。いわゆる口頭伝承であり、こちらの方が歴史は古いです。

語りで物語を伝える行為は、文字が生まれる前から行なわれてきました。昔話においては、語り手は主に祖父母で、聞き手は孫です。

たとえば農家の囲炉裏端で、おばあさんが孫に昔話を語って聞かせました。孫もまた大人になると、自身の子や孫に昔話を聞かせたのです。


そして「ふたつの桃太郎」においては、「桃から生まれた」が主に語りの桃太郎で、「おばあさんから」が主に江戸時代の絵本の桃太郎であるといえます。それが明治以降に「桃から」に統一されます。

昔話としての『桃太郎』の起源はわかりませんが、少なくとも室町時代には語られていたといわれています。庶民の間で語られたので、この時代の文献には記録されていません。『桃太郎』が文字に記録されたのは、江戸時代の絵本=草双紙からでした。これが赤本版とよばれる『桃太郎』です。

赤本には『さるかに合戦』『舌切り雀』など、昔話を題材にした作品があります。これらは作家のオリジナルでなく、すでに知られていた昔話をもとに書かれたものです。そこには時代の流行や、作家によるアレンジが加わっています。『桃太郎』も同様です。

名もなき人々が語り継いだ物語

昔話の種となるものは、古代から中世の間に生まれたと考えられます。それがいつしか物語として形作られ、長い時間をかけて西へ東へ、日本各地に広まります。

ほとんどが口伝でよるもので、その過程で伝言ゲームのように変化していきました。語り手がアドリブで変えた設定が、その地域では定着することもあったでしょう。ですから、桃太郎ひとつとってみても、設定やディテールが違うものが無数に存在します。

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