桃太郎には桃から生まれた「果生型」と、おばあさんが若返る「回春型」の2パターンある【1】 (4/5ページ)

Japaaan

桃太郎の生まれ方も、「箱から生まれる」「タンスから生まれる」など、何だそりゃ!?というものがいっぱいです。そのなかに「おばあさんが桃を食べたら、桃太郎が生まれた」とするものもあります。もしかしたら赤本の作者は、それを土台にしたのかもしれません。

とはいえ「桃を食べたら生まれる」展開は、全体から見れば一部です。口頭伝承の桃太郎誕生シーンの主流は「桃から生まれる」だったようです。

また、赤本は流行したとはいえ、主たる読者は都市に住む町人だったでしょう。交通事情などを考えれば、全国の山村漁村にまで赤本が行き渡ったとは考えにくいです。

つまりテレビやインターネットのように、ひとつのイメージを固定してしまうほどの影響力はなかったでしょう。

民俗学者の柳田国男は、赤本版に対して否定的でした。昔話を研究し『桃太郎の誕生』を著わした柳田は、桃太郎は地方で語られる果生型こそ先にあると考えたのです。

そうした名もなき村人たちが語り継いできた昔話も、大正時代から現代にかけて採集されることになります。民俗学者や昔話の研究者たちが、語り手たちから聞き取り記録しました。柳田国男も昔話採集を推進しています。

こうして昔話集などに収録されたそれは、数万単位の膨大な量で、そのなかで桃太郎の類話は大きな割合を占めています。これが、いろいろな桃太郎が存在した証といえるでしょう。

変な桃太郎がいっぱい!……だったのに

「若返り説」を全否定するわけではないんです。江戸時代の絵本は貴重な資料であり、「出版された桃太郎」の元祖であることは間違いないでしょう。ただ、「これが桃太郎の唯一無二の原作だ!」という解釈が浸透し、昔話の広大無辺な世界が狭まってしまうのが、もったいないのです。

桃太郎という名の少年の物語は、星の数ほど存在します。

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