桃太郎には桃から生まれた「果生型」と、おばあさんが若返る「回春型」の2パターンある【1】 (2/5ページ)
さらに、かつて一世を風靡した『トリビアの泉』でも同様の説が紹介されています。
そして先日放送された『博士ちゃん』にも、桃太郎博士ちゃんが登場し、この「若返り説」も紹介されました。
いずれも「赤本」や「黄表紙」などとよばれる江戸時代の草双紙、今でいう絵本に描かれた『桃太郎』を中心に説明されたものです。
要点をまとめると、「江戸時代まで桃太郎は回春型だった。それが明治時代に、教育上よろしくないという理由で果生型に変えられた」と読み取れる内容でした。
しかしこれに対して、昔話を研究している人には異論があるようです。情報を受け取る側に、偏ったイメージを与える可能性があるからです。果たして桃太郎が生まれたのは「桃から」か? 「おばあさんから」か?
どちらが本当でしょうか?
結論から先に言ってしまいます。どちらも本当です。ふたつのパターンは江戸時代以前から共存していました。「桃から生まれる」という展開は、明治時代に急に作られたものではないのです。
どうしてひとつの物語に、いくつものパターンが存在するのでしょうか。それを理解するには、「昔話を伝える=絵本を読み聞かせる」という思い込みから離れる必要があります。
桃太郎誕生の真実には、「絵本」として流通した桃太郎だけを見るのだけではなく、形のない「語り」によって伝承した桃太郎を知らなければ、近づくことはできません。
囲炉裏端の桃太郎と、絵本の中の桃太郎桃太郎に限らず昔話は、「絵本」と「語り」のふたつの表現方法によって伝えられてきました。「絵本」の日本での始まりは室町時代に作られた御伽草子で、貴族や武家に楽しまれたものでした。庶民に広まったのは、出版技術が発達した江戸時代以降のことです。