東京五輪 「1年延期」攻防戦 IOC再び強権発動へ (2/2ページ)
この要請を受け、国内ではスポーツ界で開催を延期したり、無観客で試合を行うなどが相次いでいるが、それでも収束の気配すら見せない新型コロナ感染は、極東から米国やイタリア、イランなど全世界へ拡大。これを見たIOCのディック・パウンド委員(カナダ)は2月25日、通信社のインタビューで「3カ月経っても事態が収束していない場合、おそらく中止を検討するだろう」と見解を示し、この“最悪のシナリオ”について開催可否の判断は「5月下旬が期限となる」との見解を示した。
東京五輪組織委員会や小池百合子都知事は、トーマス・バッハIOC会長の「予定通り開催する」という言葉を信じ、パウンド氏の発言を個人的な意見としているが、大手広告代理店の五輪担当者はこう異を唱える。
「IOC委員の中で、英国、米国を主軸にカナダ、豪州、ニュージーランドなどのアングロ・サクソン派を束ねるのがパウンド氏です。数の上ではバッハ会長派に劣りますが、北米や英国のテレビ局の支持を得ています。彼の意見は、すなわちテレビ局の意向。IOCの財布を握る男だけに、バッハ会長も無視できません」
日本としては、感染収束へ時間を稼ぎ、「10月への延期」をバッハ会長に働きかけているが、これは不可能。秋はNFL(フットボール)、NBA(バスケットボール)、MLB(大リーグ)、欧州各国のサッカーのリーグ戦開幕と重なり、巨額の放映権料をそれぞれに支払っている欧米のテレビ局は、時期がかぶる東京五輪の秋開催には断固反対するのは間違いない。
「五輪放映権料の返還訴訟に及びかねない」
と明かすのは民放テレビ局幹部。
「1984年のロサンゼルス五輪以降、オリンピックは莫大なスポンサー料と世界各国のテレビ局から得る放映権料で成り立っており、IOCはテレビ局が納得しない秋の五輪開催は認めていない。前回の東京五輪当時(10月開催)とは取り巻く環境が一変している」
そこで浮上してきたのが、五輪開催時期の「1年延期」案だ。1年中断して夏に開催すれば、アングロ・サクソン派のIOC委員も応じ、テレビ局の放映権料も手に入る。それより何より、最悪のシナリオである「中止」が回避できる。
米国にとっても、新型コロナが収束しないまま東京五輪が開かれた場合、感染防止から、米国人選手の日本への入国審査が厳しくなると同時に、日本行きを拒否する選手も増えるだろう。そこで感染が確認されたら、選手村の封鎖にもつながりかねない。
今夏に強行開催し、新型コロナの混乱で米国選手が不甲斐ない結果となれば、大統領選挙にも影響を及ぼす――。東京五輪の「1年延期」は、安倍首相のみならず、トランプ大統領の願いでもある。