医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<排尿トラブル>「『尿意は我慢しない』は間違いだった」

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医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<排尿トラブル>「『尿意は我慢しない』は間違いだった」

 くしゃみをした時や歩いている時に、尿が漏れて慌てたことはないだろうか。中高年男性の尿漏れの原因の多くは「前立腺肥大症」だ。

 加齢に伴い前立腺が大きくなると、尿道や膀胱が圧迫され、尿が出づらくなることで、前立腺などの筋肉が排尿しようと頑張りすぎて過剰に収縮し、脳との連携もスムーズにいかなくなり、「過活動膀胱」の状態となるのだ。

 他にも、夜中に何度もトイレに行く「夜間頻尿」や、「残尿感」を感じたり尿の勢いがなくなる、尿のキレが悪いなど、さまざまな要因につながる。排尿トラブルは、60代の男性では半数以上、高齢男性のほとんどが抱えているといわれ、生活に支障がないかぎり治療の必要はない。

 ただし、排尿してもまたトイレに行きたくなる「尿しぶり(尿意急迫)」が長く続くと、急に尿意をもよおす「切迫性尿失禁」につながるおそれがある。さらに悪化すれば、尿道が完全にふさがり、尿が漏れ出る「溢流(いつりゅう)性尿失禁」を引き起こす。これによって腎不全などのリスクも高まるため、早急な治療が必要だろう。

 排尿トラブルを解消するには、適正な水分摂取を心がけたい。冬場は1リットル、夏場は1.5リットル、運動をした時は2リットルの補給が目安である。

 最近は、インナーマッスルを鍛えている人のほうが、尿トラブルが少ないこともわかっているため、姿勢を正して、体幹やインナーマッスルを鍛えることも意識したい。

 ちなみに、「トイレは我慢しないほうがよい」とよく言うが、それは間違い。

 なぜなら、頻繁にトイレに行くことで、普通は400ccくらい尿をためられるのに、150ccくらいで我慢できなくなってしまい、頻尿になることがあるからだ。

 1日9回以上トイレに行く人は、多少は、我慢することを意識してみる必要がありそうだ。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

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