2009年WBC世界一 「イチローの8球」の陰にあったドラマ (5/5ページ)

新刊JP

三井:それまでイチローは、相手バッテリーの配球をこちらに聞いてくるということがまったくなかったんです。

国際試合で知らない相手ですから、それまでもほとんどの選手は相手投手が交代するごとにいろいろなことを聞きに来ていたのですが、イチローだけは来ませんでした。あれだけの選手ですし、「こちらも任せておけばいいや」と思っていたのですが、決勝のあの場面で急にどの球種を狙えばいいかを聞かれたので、びっくりしました。

――そこで、「シンカーを狙え」と指示された。

三井:ツーアウト1・3塁というシチュエーションでした。二球目に1塁走者だった岩村(明憲・元ヤクルトスワローズ)が盗塁して2・3塁になりましたが、いずれにしても林としては内野の頭を越させたくないはずですから、外から中に入ってくる軌道のスライダーやカーブは投げにくい。だから、それとは逆の逃げていく軌道で、打ってもゴロになりやすいシンカーを投げてくると考えました。

――その通りシンカーをセンター前に打ち返しましたが、それまではストレートをファールにしていました。これはシンカーを待っていたのでしょうか。

三井:多分そうでしょう。イチローはそれまでこちらにアドバイスを求めてこなかったとお話しましたが、それでも、こちらの指示は聞いてくれていたんです。

大会初戦の韓国戦で私は相手投手の金廣鉉(キム・グァンヒョン)への対策で「スライダー狙い」を指示していました。試合開始直後の先頭打者で打席に立ったイチローは真ん中のストレートを見逃して、スライダーをヒットにした。

こちらとしては、彼が指示を聞いてくれるかどうか、まったく未知数でした。だけど、初戦の第一打席で打ち合わせ通りの打撃をしてくれた。あの瞬間はうれしかった。

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(インタビュー・記事/山田洋介、撮影/金井元貴)

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