元日本地理学会会長 奥野隆史の遺作「筑豊炭田地誌考」に記されたある夢 (1/5ページ)

心に残る家族葬

元日本地理学会会長 奥野隆史の遺作「筑豊炭田地誌考」に記されたある夢

昔からよく言われていることがある。人は死期が近くなると、自分より先に亡くなっていた親、配偶者、友人などが夢の中に現れて、にこにこと笑いながら手招きをしているというものだ。または、事故で瀕死の重傷を負ったときや、脳疾患などで突然倒れ、意識を失ってしまったとき、どういうわけか、今まで見たことも、行ったこともない美しい花園を歩いている。または、自分の人生が走馬灯のように、小さい頃から現在まで、映画のように目の前を流れていく。

■死期が近くなると不思議な夢を見るというが

蕩然とそれらにひたっていると、突然、自分と知己がある人々や「神様」「仏様」「天使」みたいな人が現れ、「ここはお前の来るところじゃない!早く帰れ!」と激しい声で怒鳴りつける。その勢いに押されてびっくりして、我に返ると、自分は救急病院のベッドに伏せっていることに気づく。そして自分のことを家族や医師、看護師らが心配そうにのぞき込んでいたり、泣いていたりする。しかし自分が目を開け、意識を取り戻したことに人々は大喜びで、「助かった!」「大丈夫!」と歓喜の声を上げ、自分にすがりついてくる…・

果たして本当に、人は死期が近くなると、このように不思議な夢を見てしまうものなのだろうか。

■元日本地理学会会長 奥野隆史とは

1932(昭和7)年、東京・神田の古書店に生まれ、1957(昭和32)年に東京教育大学理学研究科博士課程(現・筑波大学大学院)を修了後、1969年から2003年まで34年に渡り、地理学の研究・教育に関わってきた奥野隆史は、遺作となった100ページにも及ぶ論文、「筑豊(ちくほう)炭田地誌考」の結言において、「本稿作成中に次のような夢をみた。この夢を持って結言の代わりにしたい。夢なのでタイムスパンはでたらめである」と断り、冒頭の序言の中で「筑豊炭田」を研究対象として選択した理由として、「炭田の成立・発展・消滅に至る過程がかなり明確であり、周辺地域は企業城下町的性格を多分に有する」と地理学者らしく断った後、「わが国最大の炭田消滅に対する一篇のレクイエム」として、自身が追求し続けてきた分析的地理学を完成させたのである。

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