美しすぎた故の不幸…戦国時代、禁じられた悲恋に命を散らした少女・初音姫 (2/4ページ)
わたくしは玄蕃允さまの許へ参りとう存じます……!」
玄蕃允とは志摩国における地頭衆の一人・越賀玄蕃允隆俊(こしが げんばのじょうたかとし)のことで、九鬼一族とはライバル関係に当たります。
聞けば玄蕃允とは相思相愛であるとの事で、つまり知らぬ間に「夜這い」をかけられてしまっていたのでした。
「何という屈辱……!玄蕃允となど、断じて許さぬ!」
怒り狂った澄隆は、もう二度と「間違い」の起こらぬよう、藤九郎との縁談を強引に進めてしまいます。
決死の脱出も虚しく……しかし、初音姫も玄蕃允への想いを断ち切れません。
「どうしよう、このままでは藤九郎と結婚させられてしまう……」
思い詰めた初音姫は、ある晩に皆が寝静まった頃合いを見計らって波切城から脱出、玄蕃允の許へ走りますが、そんな思惑などお見通しとばかり、藤九郎が待ち構えていました。
「九鬼一族の娘でありながら、敵に通じようとは不届き千万……死ね!」
必死で逃げる初音姫に抜刀し、その首を斬り飛ばした……と思った藤九郎ですが、刀はなぜか地蔵の首に当たり、真っ二つに折れてしまいました。
「どういう事だ……?」
藤九郎が戸惑った隙に時間を稼いだ初音姫ですが、女性の足で逃げ切ることはできず、結局は藤九郎に捕まってしまいます。
「……この、九鬼一族の恥さらしめが!」
澄隆はカンカンに怒り狂って初音姫を散々に折檻(せっかん)した挙げ句、土牢に幽閉してしまいました。