「愛の不時着」は無理筋!? 北朝鮮に抑留された記者が明かす地獄の監禁生活 (2/2ページ)
「食事はきちんと3食出してくれましたし、洗濯物もホテルのクリーニングに出すだけでした。しかし、都市部であっても、毎日のように停電があったのは事実です。バスタブにお湯をはる習慣はないようで、蛇口をひねっても、水がチョロチョロ出るだけ。夏場には給水車が街をまわって30リットル入りのタンクを各家庭に届けていました。今でも強烈に覚えているのは、拘束されて10日目くらいで、“拷問ビデオ”を見せられたこと。その時は背筋が凍る思いでした。もっとも、その映像は、南(韓国)の映画を無断で編集し直したもののようでした」
いつ帰国できるか、出口がまったく見えないなかで、地獄の監禁生活を送っていた杉嶋氏。政府や外務省が水面下で働きかけたこともあって、「国外追放処分」という形でついに日本へ帰国することとなった。2002年2月のことだ。
「北朝鮮にいる間、私は5回ほど“宿舎”を移動させられました。最後に抑留生活を送ったのは、羊角島国際ホテルの最上階にあたる43階の部屋でした。この北朝鮮が誇る超高級ホテルでさえ、部屋にはコンセントがひとつもありませんでした」
前出の「愛の不時着」では、華やかな富裕層の暮らしぶりが描かれていたが、高級ホテルにコンセントひとつないとは驚きだ。北朝鮮の対韓国宣伝サイトが同ドラマを「虚偽と捏造に満ちた虚しく不順極まりない反・共和国ドラマ」と酷評したが、たしかに、良くも悪くも現実離れした描写はあったのかもしれない。
「北朝鮮に監禁されていて、身をもって感じたのは、告げ口や密告によって他人を蹴落とすような監視社会であること。私自身、散髪をしたあと、体調をチェックするために、ポケットに髪の毛をしまっただけで密告されましたから。人民をコントロールしているのは恐怖以外の何物でもなく、側近たちは運命共同体であると同時にさまざまな利権を共有していることから、北朝鮮という国は、そうすぐには変わるとは思えませんね」
南北の緊張が高まるなか、間違っても独裁国家に「不時着」したがるようなファンが出てこないことを祈るばかりだ。
(編集部)