現役システム開発企業社員が共作 SEの世界がわかるサスペンス系IT小説 (4/5ページ)

新刊JP

――作中で、クライアントとのコミュニケーションの齟齬から会計システムがクライアントの想定していたものと違っていた場面があって、そこで登場人物の小向英樹が、本来作るべきだった会計システムのファイルの場所を、膨大なデータの中から経験で探り当てた場面が印象的でした。システム開発は「経験」や「勘」の類とは無縁の世界というイメージがありましたが、そんなことはないんですね。

堀江:勘や経験が生きる場面は今でもあります。私の普段の業務では、開発途中のシステムや既に動いているシステムで問題が発生した時にトラブルシューティングに入ることが多いのですが、システムが止まってしまって、一刻も早く復旧しないといけない時は、網羅的に原因を追究するアプローチに合わせて、エンジニアとしての経験から「このあたりがあやしい」というあたりをつけ、優先順位をつけて調査していくことも多くあります。そうすることで、早期の原因究明と対策立案を行い、復旧までの時間を短くすることができることもあるんです。

――しらみつぶしに原因を探すのでは時間がかかってしまう。

堀江:そうですね。そのシステムがどういう構成になっているのか、トラブルが起こると出てくるエラーメッセージがどんなものなのか、といういくつかの「ヒント」があれば、「こういう場合はこういうことが原因でトラブルが起きることがある」というように、多様な製品の組み合わせや様々なシステム構成を経験してきたエンジニアであれば、それまでの経験の引き出しからの類推で、原因をある程度予想することができるのです。その予想プラス、システムに残っているログなどの「証拠」と突き合わせて問題個所を特定していきます。そうやって、勘と経験みたいなところと、証拠をベースにしたロジックを組み合わせるというアプローチをとることはしばしばありますね。

だから、SEは勘や経験っていう人間ならではの能力もある程度生きる仕事だとは思います。それもこの作品を通じて読者の方に伝わればいいなと思いますね。

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