角川春樹 監督作「みをつくし料理帖」はいつか映画化したかった (2/2ページ)
角川 アハハ。ユーミン(松任谷由実、この映画の主題歌を作詞・作曲)にも同じようなコメントをもらったよ。「愛すべき、はちゃめちゃな角川春樹さん。(中略)人生の最終章で、こんなにも丁寧なやさしさに昇華されていることに、今は感動しています」って(笑)。
テリー やっぱり角川さんのことをよく知ってる人ほど、この映画には驚くんですよ。ずっと「これが最後の監督作品だ」とおっしゃってますけど、なぜこの小説だったんですか?
角川 かれこれ12年前かな。その時、高田郁さんの時代小説は別の出版社から1冊だけ「出世花」というのが出ていて、1万5000部刷って、500部しか売れなかったんだよ。実は、そのうち本人が200冊買って、うちの事務所で200冊買ったんだけどね。
テリー ということは100冊しか売れなかった。
角川 そう。で、私は「今度、この作家に書かせるから」って、その200冊を本屋さんにバラまいたの。高田さんは出版社から「あなたの本は売れません」と言われて、落ち込んで、宝塚に戻って執筆を断念しちゃった頃でね。
テリー あらら、なんでまた。
角川 一に舞台が「江戸」ではなく八王子だったこと、二に「チャンバラ」がなく剣豪が出てこないこと、三に「捕物帳」じゃないこと。その3つが時代小説の定番だったんですね。でも、それは別の人が書けばいいから、高田さんには料理を題材に人情小説を書いてもらおうと、うちの編集者に行かせたんですよ。
テリー それで生まれたのが「みをつくし料理帖」。
角川 だいたい時代小説の読者は、50代か60代の男性なんですよ。ところが、書店の文庫本の担当には女性が多くて、彼女たちに時代小説は無縁だったわけ。それで、最初に出した時に、私が「山本周五郎の『さぶ』以来の感動がある」と推薦の帯を書いた。そのぐらいほれ込んだ小説だったから、いつか映画化したいとずっと思っていたんですよ。まさか自分で監督をやるとはまったく思ってなかったけどね。