西野七瀬と斉藤優里それぞれの個人PVで「SF」と「日常」が同居する荒船作品【乃木坂46「個人PVという実験場」第14回3/4】 (2/3ページ)
その系譜の作品に位置する一編が、荒船がZUMIとともに監督を務めた斉藤優里主演「斉ボーグ優里」である。
https://www.youtube.com/watch?v=OfQtiYbIL_k
(※斉藤優里個人PV「斉ボーグ優里」予告編)
身体の一部が武器化して敵と戦うという筋立ては、各種の創作でしばしば見られる、定番の類型の一つである。またそうした創作物につきものの、未知の外敵らしき存在も作中では示唆される。
しかし一方、アルバイト先の店長に片思いする斉藤にとって最大の敵は、同じく店長に思いを寄せるバイト仲間であり、サイボーグとしての特性を賭けた戦いも、とりたてて世界の行く末に直結するわけでもない、バイト仲間とのいさかいにのみ発揮される。
そしてまた、同作はSFバトルものではありつつも、すべては斉藤の片思い相手への気持ちに連動して生じる、空想の産物としての解釈の余地を残している。彼女の気持ちが最大にかき乱されて生じるラストも、あくまで日常を生きる斉藤の心象風景なのかもしれない。
いずれにせよ、クライマックスのバトルを描いた映像のクオリティと大仰さは、爽快な驚きと可笑しみをもたらしてくれる。形式上はCDシングル特典、それもそのうちのごく一部でしかないはずのコンテンツに、この異様な充実度が見出だせるのは、まさに個人PVという企画の醍醐味である。
■日常とSFが自然に溶け合う光景
「斉ボーグ優里」から1年後、乃木坂46の17枚目シングル『インフルエンサー』収録の個人PVで荒船は再度、バトルものをモチーフに個人PVを手がける。